リストラという言葉はもうすっかり定着したようです。けれども定着したということは、それだけ多くの人と関わりがあるという証でもあります。今この瞬間にも、リストラという名の一方的な解雇や辞めさせるためのいじめに悩んでいる人がいます。人としての尊厳を傷つけられたことに怒り、立ち上がった人もいます。次は、あなたの番かもしれません。あなたなら、どうしますか?
辞めさせるための経費は使いたくない
「仕事を取り上げられ、上司から退職するよう言われた」(20代女性)、「上司が暴力をふるったり、趣味を押しつけたりしてくる」(20代男性)、「月15日だったパートを一方的に10日に減らされた」(60代女性)、「職場でのいじめがひどく、うつ状態で休養中」(40代男性)…。
「管理職ユニオン・関西」が2002年10月に設置した「労働相談ホットライン」に寄せられた相談内容の一部である。2日間で受けつけた57件の相談の内容は、年代、性別、業種もバラバラなら、雇用形態も正社員ありパート・派遣・契約もあり…とさまざま。共通しているのは、誰もが仕事を失う不安や「いじめ」によるストレスを抱えているということだ。「ここ数年、問題の多い事例が増えているのを実感しています」と書記長の仲村実さん(55歳)は話す。「仕事のテンポが遅いというようなささいなことを辞めさせる理由にしたり、面倒な仕事を強制して自主退職するよう仕向けるんですよ。それでも辞めなければ、“クビになれば将来に響くだろう”と懲戒解雇をちらつかせて脅す会社すらあります」。不況が長引き、企業間の競争も厳しい。経営者にも余裕がないため、辞めさせるのに少しでも経費は使いたくないのが本音だ。
カッとなって辞める前に権利を行使する
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管理職ユニオン書記長・仲村実さん |
「日本の企業や上司は、業務命令と言えば何でも通用すると思っているんですよ。たとえば仕事を取り上げ、総務部付けにして自分の転職先を自分で探させる。仕事としてやらせるわけです。3ヶ月もやって見つからなければ辞めるしかない。業務命令という錦の御旗を振りかざして、人権侵害をしている企業は多いですね」
ひどいと思っても、「業務命令」と言われれば抵抗しづらい。相手が上司個人ではなく「会社」としてプレッシャーをかけてくれば、なおさらノーとは言えない。相談できる組合もない。そんな人はどうすればいいのだろう。
「人を人とも思わない対応にカッとなる気持ちはわかります。でも“こんな会社、こっちから辞めてやる!”と啖呵を切って辞める前に一呼吸おいてほしい。たとえば一年契約で就職したのに途中でクビだと言われればあっさり辞めてしまうが、それでは企業の横暴を許すことになる。その人自身もいつまでたっても安定した仕事に就けないだろうし、結果的に全体に影響するんですよ」
正社員に比べて立場が弱いとされているアルバイト・パートや派遣、契約社員にも労働者としての権利はある。アルバイトやパートでも、いきなり辞めさせることはできない。理不尽な解雇をされた場合は2年遡って賠償の請求権がある、など。仲村さんは、「まずは自分の労働条件を把握し、どんな権利があるのかを日頃から把握しておくことです。みんなが権利意識をもち、行使することによって働く人すべての環境がよくなっていくんですよ」とアドバイスする。
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