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A3.明治以後の日本における最初の障害者欠格条項は、知的障害者・精神障害者に被選挙権を認めないとする1878年の「府県会規則」であるといわれています。民法(1896年制定)は、1890年の試案の時から90年にわたって「聾者・唖者・盲者」を十一条「準禁治産の宣告」(正常な判断能力が不十分なため法律行為を一人では行えないとするもの)の対象にしていました。「目が見えない」「耳が聴こえない」「口がきけない」ことをもって、無能力または能力が劣るものとして行為を制限する欠格条項は、制度への誤解、障害者への偏見を広めました。1979年、障害者運動の盛り上がりのなかで、民法十一条から「聾者・唖者・盲者」の文字は消えましたが、障害者を主体的な存在として認めない精神とともに欠格条項を盛り込んだ法令は残りました。
A4.障害や病気のある人を一括りにし、その排除を法律に明記してきた欠格条項ですが、1999年の政府方針によって見直し作業が始まりました。各省庁が見直し対象に指定した63制度について作業を進め、その約半分にあたる制度の見直し法案が2001年の通常国会に提出され、可決・成立しました。この法案に共通していたのは、次の二点です。
(1)受験について障害者欠格条項は削除する。
(2)「目が見えないもの、耳がきこえないもの・・・精神病者には免許を与えない」のような、障害名・病名をあげて「免許を与えない」とする条文は削除する。
医師法などの27法令のうち、欠格条項を撤廃したのは栄養士法など3法令です。残りの多くの法令には、試験に合格しても免許を与えないことがある対象として「心身の障害により業務を適正に行うことができない者」という条文が入りました。つまり、「障害や病気によって免許を与えないことがあり、くわしくは省令で決める」という形で、実質的に欠格条項を残したものです。
A5. 政府は63の法令について見直しを決定しましたが、これだけでは十分ではありません。特に地方条例における欠格条項は非常に数が多いのです。たとえば「障害者欠格条項をなくす会」が2000年に行った調査では、東京・神奈川・埼玉の3都県内の市町村で、障害者に係る欠格条項を定めた条例が85も見つかりました。その内容は、圧倒的に公平委員会・教育委員会の傍聴制限が多く、次にプールや老人福祉センターなど公共施設の利用制限がありました。
地方条例による欠格条項は国とは大きく違います。国の場合、「目が見えない」「耳が聞こえない」「口がきけない」などを欠格事由としたものも多数あったに対して、地方条例では精神障害を事由としたものがほとんどを占めています。
また、地方条例で「ふぐ調理師免許」に欠格条項を設けている自治体も多くあります。学校教職員、保育士、通訳案内業など、他にも自治体が試験や免許交付を行う職業資格は多数あり、欠格条項の差別性・不合理性を自治体がしっかりと認識しなければ、多くの障害者が不当な扱いを強いられることになります。
国の見直しや運動の高まりを受け、自治体でも見直しが進んでいます。しかし規定が削除されても現場での運用で制限されることのないよう、見守っていく必要があります。
【参考資料】
『Q&A 障害者の欠格条項』臼井久実子・編著 明石書店 1,300円+消費税 |
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