子どもポルノは犯罪だという認識が必要
・・・ストックホルム会議では、世界で流通している子どもポルノの8割が日本製だという指摘がなされ、日本に不名誉な注目が集まりました。現在はどうなんでしょう?
具体的な調査の例として、1997年のデータなのですが、アイルランドの大学教授が調べたなかでは、子ども(女の子)の性的なイメージを発信しているサイトの73%が日本発でした。しかし1999年11月に「子ども買春・子どもポルノ禁止法」が施行され、以降は急激に減少しました。
・・・法律の効果は確実に表れているんですね。ただ、表現の自由や単純所持(持っているだけ、個人的に楽しむだけという人)をどう捉えるかという課題はまだ残されていますね。
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あなたの子どもがオンラインで何をしているのかを知ること。親又は保護者としての責任を引き受け、あなたのコンピュータ・キッドが「ネットスマート」となるようにすること。
(『インターネット上の子どもの安全ガイド』より) |
子ども買春・子どもポルノ禁止法は施行3年後に見直しをすることが予め決まっています。2002年の11月に3年になるので、すでに議員レベルでも議論が始まっています。
今回、大きく議論が分かれるのは単純所持と、いわゆる子どもポルノ漫画についてでしょう。直接の被写体がいないポルノ、国際的な言葉で言えば「擬似ポルノ」をどう規制するのかが大問題です。
もうひとつ、法律の文言として具体化するにあたって問題になりそうなのがインターネットについてです。インターネット上の子どもポルノをどういう形で規制するか。文言の書きようによっては拡大解釈されて不当な規制につながるのではないかという意見があります。
子どもポルノに絞ってはこの3点が大きな焦点になるのですが、子どもポルノには買春観光と情報交換も絡み合っています。また日本は出会い系サイトを通じた援助交際という形で買春先進国になっていますが、インターネットが子ども買春や性的虐待をするための手段として使われています。こういった問題を法律の文言にどうおとしこむかとなると、情報統制の問題とどうしても議論がつながってしまいます。表現の自由を守ろうという動きと、それを悪用しようとする動きの狭間で非常に悩ましいし、これから議論していくうえでも大きな難点になりそうなところです。
しかし忘れてはならないのは、「表現の自由は万能の権利ではない」ということです。誰かを傷つけるのであれば、それは表現の自由として保護するに値しないという認識はきちんともっておかなければいけないのではないでしょうか。全部をごっちゃに議論するのは非常に危険です。「子どもポルノは犯罪である」ということを法的レベルで明確に規定し処罰対象とすることで、逆に権力の濫用に歯止めをかけられると思います。
子どもをサポートするという姿勢を
・・・インターネット上も含めた子どもポルノの現状と課題、法律の問題などが具体的に浮かび上がってきました。子どもポルノを興味本位で見るだけでも需要とみなされ新たな供給を生み出すこと、それが巡り巡って子どもへの性的虐待を再生産しているという事実を忘れてはならないですね。
ところで、子どもたちはどんな自覚やルールを身につければよいのでしょうか。
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地元の学校が生徒に対して、オンライン情報から得られる利益と限界について理解するために必要なスキルを教えているかどうか確認すること。
(『インターネット上の子どもの安全ガイド』より) |
ガイドでも「ネットスマートルール」として紹介しましたが、子どもたちがきちんと判断し決定できる、つまり主体としてふるまえる力を身につけられる取り組みが必要です。
子どもたちがインターネットを使って何をしているのかを知らないし、それについての会話もないという家庭が多いのが気になります。まして性の問題になると、親はやたら抑えつけたり放任したりしがちです。きちんとした親子の対話がない一方で性情報は氾濫していますから、子どもたちは中途半端な、あるいは間違った情報を身につけてしまうことになります。
子どもたちが興味をもっているインターネットは、対話のきっかけになると思うんですよ。「インターネットを使う時、子どもポルノや買春に巻き込まれるかもしれない」というところから話をしていけば、性の問題なども話しやすくなるのではないでしょうか。
・・・子どもたちを危険から守るというよりは、子どもたちが自分で危険だと判断し適切な行動がとれるようになるための対話や取り組みが必要なんですね。
自己決定の話に関連するのですが、インターネットの問題にしろ援助交際にしろ、子どもたちは自分で得た情報に基づいて行動を決定しています。情報自体に問題があるにしろ、子どもたちが情報さえあれば行動していける能力があるという証明だと思います。
だったらなおさら子どもたちにちゃんとした情報や知識を提供していくことが大事だと思うんです。
安全ガイドではフィルタリング(年少のユーザーにとって有害となる可能性のあるコンテンツを識別するソフト)の使用を勧めてはいるのですが、親や教師が子どもに見せたいものしか見られないようにするといった使い方はしてほしくないんです。
インターネットというのは情報を捜し求めて取捨選択するという訓練になりますし、メールをやり取りするようになればマナーや相手から情報を引き出すためのメールの書き方なども身につくわけです。そういった意味では、子どもの年齢や状況に応じて親はサポートするという姿勢でいてほしいし、その時にこのガイドが役に立てばとてもうれしいですね。
・・・インターネットは誰もが人権を侵害する、あるいは侵害される立場に簡単に置かれる可能性があるということと、主体的に関わることでそれが防げることがよくわかりました。おとなたちがそういう意識をもち、子どもたちにも責任をもって伝えていくことが何より必要ですね。ありがとうございました。