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子ども虐待ー子どもの権利、子どもの人権ー

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民間団体の立場から
児童虐待防止協会(大阪府)を訪ねて

 取材のあいだ、相談電話のコールはまさに途切れることがなかった。オフィスには相談スタッフが3名。それぞれが受話器を置いて次のコールが鳴るまで3分と時間が空かない。あるスタッフは取材の間中、電話の前から離れられなかった。
 
 児童虐待防止協会は1990年発足。日本で最も早くに誕生した児童虐待防止を主体とした民間団体である。スタッフは現在22名。臨床心理士、ケースワーカー、保健婦、大学教員、家事調停委員などいずれも実践経験のある専門家が週1度のローテーションで相談電話を受けている。
 同協会がこの12年で受けた相談件数は27000件、1年2000件強、平均して1日10件の相談電話がかかってきたことになる。件数そのものは類似の相談機関が増えたので伸びていないが、相談内容は深刻化しているという。
 1回の相談電話に平均約40数分、電話は相談をする側も受ける側も匿名かニックネームが基本だ。最近の傾向としては具体的な虐待の悩みとともに、子育て相談が増えている。相談電話は、1度で終わる人もあれば、何度もかけてくるリピーターも少なくない。ちなみに相談電話をかけてくる男女の比率は女性平均98.4%、男性平均1.6%となっており、虐待者からの相談は圧倒的に女性が多い。また、近年の相談は狭義ではなく、広義の意味で虐待防止につながる内容が増えている。「お母さんの孤独を感じますね。話すことで気持ちを整理しているのではないでしょうか」。
 こうした電話相談の中で、明らかに「これは危険だ」と感じるケースは全体の約1%。一般には1人の相談者の背後には8人の無言の相談者が、専門機関では1人に対して10人、性的虐待の場合は助けを求める1人の背後に100人の被害者がいると言われている。表面化する深刻なケースはまさに氷山の一角に過ぎない。
 問題をキャッチした児童虐待防止協会では、相談者の同意を得ながら児童相談所に「この地区の、この家庭でこういう危ないケースがあるので協力してくれませんか」と協力を依頼する。
「以前は、我々民間機関の依頼には腰の重かった関係機関も、児童虐待防止法が成立していく過程で連携がとりやすくなりました。“わかりました、立ち入り調査をしてみましょう”と。課題は山積みですが、以前よりは失われなくてよい生命が救われています」。
スタッフのひとり、楠本高敏氏はそう語る。
 ということは、民間機関と専門機関の連携はうまく進んでいるのだろうか。「ここ10年のあいだに、関係機関それぞれの専門性は飛躍的に高くなりました。しかし、専門レベルが上がると組織が自己完結型になっていく傾向がある。自分たちですべてやれるんだ、外部の機関や民間のプロジェクトを入れることはない、というふうに」・・・・。

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