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個人単位の登録制度への転換の可能性

二宮さん写真――戸籍制度は、日本独自のものなんでしょうか?

 かつて日本が植民地支配をしていた韓国と台湾には、日本と同じような戸籍制度がありましたが、韓国では08年1月に大幅に変更され、戸籍という言葉もなくなり、個人単位の家族登録簿形式に転換されました。「戸主」を中心にした家族全員が記載される、戦前の日本のような戸籍が残っていた中、05年に、戸主制度が憲法違反だという憲法裁判所の判決が出て、大改革が行われたのです。

――韓国で改革できたことが、日本では出来ない理由はないのではないでしょうか。今後、日本の戸籍制度は、どのように改革されるべきでしょう?

 私は、議論のたて方が二つあると思います。
  一つは「戸籍の公開原則」を取りやめて、非公開にすること。ただし、弁護士らの職務上の便利さなどを配慮して、訴訟は細かい情報がなくても遂行できるようにするなどバランスをとっていかなければなりませんが。先述したように、本人以外が戸籍を取得した際に「本人通知」をすることも必須です。
  もう一つは、世帯単位を取りやめて、個人単位の登録制度に転換することです。(1)氏名、生年月日、死亡年月日、(2)登録(本籍を廃止する)、(3)登録事項(現在の戸籍事項欄に当たる)、(4)性別、国籍、(5)家族関係(本人の父母、子、配偶者それぞれの氏名、生年月日、登録地)、(6)その他事項(推定相続人廃除、親権喪失、未成年後見人選任など)を、登録簿に記載するのです。「登録事項欄」を設けることにより、相続人確定も可能。定住外国人で、個人別登録を希望する人には、登録した年月日を記載し、日本人と平等の取り扱いを進めたら良い。年月日の記載は、元号表示から西暦表示に改めたら良いと思います。

――個人単位の登録制度への移行が必要だと思えてきました。家制度イメージからの脱却にもつながりますね。その場合のデメリットは何ですか。

 個人単位の戸籍、登録制度は、80年代後半からの選択的夫婦別姓の議論の中で盛り上がりを見せたことがありましたが、選択的夫婦別姓自体の実現が難しい状況の中、あまり議論されなくなったのが現状です。
  デメリットとしては、家族単位の戸籍を良しとする人たちにとって、旧態依然とした家族像が描きにくくなるという点だけではないでしょうか。夫婦と子どもからなる家族が中心か、個人が中心かの価値観の問題がキーだと思います。
  戸籍を論じるにあたって、家族の多様化、人の出自の多様性を受け入れる。お互いの存在を等価、平等なものとして認め合う気持ちが大切。部落差別、離婚差別、婚外子差別はおかしいと認識し、誰もが「身元調査をしない」ことが大切です。

――戸籍の問題は他人事じゃない。一人ひとりが、こういった問題意識を高めていかなければならないですね。今日はどうもありがとうございました。

text:井上理津子

二宮周平(にのみや・しゅうへい)
1951年、横浜市生まれ。のち愛媛県で育つ。大阪大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。家族法専攻。現在、立命館大学教授。
『新版 戸籍と人権』(解放出版社)、『家族と法ーー個人化と多様化の中で』(岩波書店)、『家族法(第2版)』(新世社)など著書多数。
著書・戸籍と人権

新版 戸籍と人権
ヒューマンライツベーシック)

税込価格:1,260円 (本体:1,200円)
出版 : 部落解放・人権研究所
発売 : 解放出版社

 

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