臨床心理士であり、心理技官として経験を重ねた浜井さんは語る。
「刑務所や少年院などの矯正施設での更生とは、心を入れ替えることと思ってる人が多い。私は社会全体が、人間は弱い存在であり、心だけで更生できるわけではないということをもっと理解すべきだと思う。再犯防止に必要なのは、社会に戻った時に生活できる彼らの『居場所』。それを無視して、少年院でインスタントに心を入れ替え立ち直った、それで再犯したら少年院は何をやってたかという発想は間違っています」
生活が安定し、居場所があって、初めて本人が自分の問題と向き合えるのだという。
現在、方策の一つとして、少しでも働ける可能性のある人に対して作られつつあるのが就労支援。雇用する会社に対して国が一定の補助金を出すという仕組みだ。ただ、居場所づくりというのは、今の日本では難題である。
「現在、国立の更生保護施設建設を京都と福岡などで計画中ですが、住民の反対運動が起きているなど問題は多く、仮に建設できてもそこで救えるのはごく一部の人。認知症の老人や身体障害者などの受刑者は行き場として老人ホームしかありませんが、空きがないために地域社会に戻るしかないのです」
だが、今はそれも許されない時代になってきており、再び刑務所に戻るために再犯期間が短くなっているのが現実だ。
浜井さんが考える理想の居場所とは?
「国立の更生保護施設に対して反対運動が起きているのは、犯罪者に対する不安から。そうした犯罪不安を解消していき、必ずしも日本はそんなに治安の悪い国じゃないと不安を取り除きつつ、犯罪者は決して特殊な人々ではなく、社会の中で負け組となった人たちであることを理解するなど、弱者に対する見方を変え、寛容な社会を作っていくこと、みんなで共に生きていくという視点ではないでしょうか」
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理解できない人、得体が知れない人を「不審者」として追いつめているのは、いったい誰なのだろうか。真実を見る目を持ち、真の「共生」の意味を自分のこととして考えなければいけない時代になってきている。
※ 2007年4月24日龍谷大学法科大学院研究室にてインタビュー text:上村悦子
浜井浩一(はまい こういち)
1960年愛知県生まれ。専門は刑事政策、犯罪学、社会調査、統計学・犯罪心理学
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