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 特定の人につきまとい、嫌がらせや脅迫を繰り返すストーカー。2000年にストーカー規制法が成立したが、事件は後を絶ちません。被害者の心身に大きなダメージを与えるストーカー事件は、なぜ起きるのでしょうか。「被害者だけでなく加害者も救済されて初めて事件は解決する」とし、加害者支援の活動に取り組むNPO法人「ヒューマニティ」の小早川明子理事長にお話を伺いました。

加害者にもケアと救済を ストーカーの悲劇をなくすために 小早川明子さん NPO法人ヒューマニティ 理事長 小早川明子さん

ストーキングは「精神的虐待」

・・・ストーカーの加害者と被害者の間に入り、被害者だけでなく加害者も救済するという取り組みをされていますね。民間の立場でこのような取り組みを始めたきっかけは何ですか?

 私自身が5年にわたってストーカーの被害を受け、とても苦しんだからです。30代の頃、私はステンドグラスを輸入販売する会社を経営していました。ある時、知り合いの男性に「一緒に会社をやろう」と持ちかけられたのですが、彼の仕事のやり方に不安があったので断ったんですね。すると態度が豹変して、嫌がらせが始まったんです。会社に押しかけてきて備品を壊し、私や社員に暴力を振るいました。「死ね」と書いたファックスを送りつけてきたこともあります。命の危険を感じて警察へ相談に行ったり、弁護士に間に入ってもらったりしましたが、有効な手立ては見つかりませんでした。当時はまだストーカー規制法どころか、ストーカーという概念すらなかった時代です。「火をつけてやる」と脅されて警察に知らせると、「本当に火をつけられたら連絡してください」と言われる始末。本当にショックでした。
 もう自衛しかないと思って警備会社を当たってみたところ、1時間3万円とか1週間前までに申し込みをしなければならないとかで使い物にならない。100社以上を当たって、ようやく現在のパートナーである藤田進一さんの会社に巡り合い、「やりましょう。今すぐいらっしゃい」と言ってもらえたんです。元警視庁警部だった藤田さんは「根本から問題解決しなくちゃダメだよ」と相手と交渉してくれ、あっけなくストーカー行為は終わりました。長い間苦しんでいたから、解放されてとても嬉しかった。会社を経営する前にセラピーの勉強をしていたこともあって、自分の経験と知識を生かして同じように苦しんでいる被害者を救済しようと思ったのがきっかけです。

・・・ストーカー被害を経験して、最も怖かったことは何ですか?

藤田進一さん ストーキングって精神的な虐待行為だと思うんですよ。電話が鳴るだけでも心臓が縮み上がるほど怖い。電話をかけてくる相手の妄想や悪意や暴力的な言動といった“背景”が見えるから、本当に怖いんです。もちろん肉体的な暴力も怖いですよ。けれども日々、言葉の暴力で精神的に痛めつけられ続けるのも相当にきついんです。
「殺すぞ」と脅され続けていた頃は、何をするにもオドオドしていました。外を歩けば自分以外の人がみんな幸せに見えたし、桜を見れば「来年は見られないだろうな」と思う。そういうことが何年も続くと「私は不幸でいいんだ」「誰も助けてくれないんだ」とどんどん卑屈で後ろ向きな気持ちになっていくんです。そして加害者とまるで持ちつ持たれつのような共依存的な関係になってしまう。
 幸いにして、私はそこから解放されました。すると猛烈な怒りが湧いてきたんです。「私は精神的虐待を受けていたんだ。許せない!」と強く思いました。

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