【朝日新聞・好書好日】「被差別部落に生まれて」書評 冤罪の可能性 肉声通し訴える
2023/08/22
評者: 椹木野衣
被差別部落に生まれて 石川一雄が語る狭山事件
著者:黒川 みどり
出版社:岩波書店
ジャンル:社会・時事
真っ先に驚かされたのは「私に(この仕事を)やる"資格"があるのだろうか」(括弧内評者)という著者の「自問自答」だった。著者は紛れもない被差別部落の専門家で多くの著書を世に問うている。狭山事件の核心は被差別部落の問題にあるが、冤罪(えんざい)という巨大な闇が輻輳(ふくそう)する裁判闘争には関わってこなかった。では、ひとりの美術評論家にすぎない私に本書を評する"資格"があるのだろうか。もっといえば、狭山事件についてほとんどなにも知らずにいた自分にはこの本を読む"資格"さえあるのだろうか。
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