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「ほっといて」は「かまってほしい」の裏返し

―――親のほうがなかなか子どもの自立を受け入れられないのかもしれません。「ほっといて」と言われると、ムカッとしたり動揺したりします。

魚住さんイメージ写真 確かによく「ほっといて」と言いますね。でもそれは「どうにも身動きがとれなくてもがいている」という気持ちの裏返しだと思います。「ほっといて」と言いながら、こちらの様子を伺いますし、時間をおいて話しかけてきたりしますよね。本当はかまってほしいんです。子どもはおとなのように理屈でものを考えません。特に「うざい」「きもい」というような言葉ばかりを使う子ほど、本当は強く親を求めている傾向があります。自分のなかにある「いっぱいいっぱいの気持ち」が論理的な言葉では言い表せなくて、フラストレーションからきつい言葉になって表れているように感じられます。そのモヤモヤ、イライラにいかに寄り添い、言語化して客観視できるまでつきあえるかということが大切ですよね。

―――子どもと対話する時、魚住さんはどんなことを意識していますか?

 わたしも「おとな」なので、つい頭で考えてしまいます。早くその子のことを理解したいし、問題を解決する方法をこれまでの経験や知識から考えてしまうんです。大事なことですが、それに頼っては絶対にうまくいかないし、逆に見誤ってしまう。どんなに経験を積み、子どもたちからたくさんのことを教えてもらってきたとしても、一人ひとりを「新鮮な目」で見て、その子だけがもつ世界を見ることが一番大切かつ難しいことなんですよ。
 でもそういう目で一人の子と向き合えたら、その子の世界が見えてきます。その時に初めて子どもは話をしてくれますし、わたしも心から共感できます。頭で理解して「あなたの気持ち、わかるよ」と言っても、子どもは「調子いいこと言ってるな」と見抜きます。時間はかかるけれど、理屈や経験を切り離し、「おとなと子ども」ではなく「人と人」として心で向き合うことです。

―――思春期に入って、急に子どもの心が見えなくなったように感じて不安になる親は多いと思います。親子ではあるけれど、「人」と「人」して向き合うことが大切なんですね。

魚住さんイメージ写真 おとなはどうしても「この場で解決したい」「すぐにでも何とかしたい」と思いがちなのですが、幼い頃からの積み重ねで現在の子どもがあるわけですから、今見えている姿ですべてを理解しようと思っても無理がある。そしてすぐに解決はできないと認識することが大事なポイントのひとつです。気になる行動をし始めてではなく、親が安心しきっていた時代まで遡って振り返ってほしい。子どもが何を好み、どんなことに喜怒哀楽を表していたか。また、子どもだけでなく、自分自身のことも振り返ってみてほしいのです。子どもが育ってくる長いプロセスのなかで、子どもに何を求めてきたか、周囲に対してどんな態度をとってきたか。子どもは親の言動を見ながら育ち、反発したり受け入れたりしながら子どもなりの価値観を築いてきています。親の価値観や生き方を振り返らなければ、「問題」解決の糸口はつかめません。

―――親にとっては厳しい作業ですね。でも子どもはもっと、そしてずっと苦しんできたのですね。ただ、親自身がしんどい状況にあると難しいように思います。

 そうですね。実際、子どもと関わるなかで親御さんと話をする機会も多いのですが、親自身が幼少期に親から受けてきた心の傷をひきずっているケースが多くあります。それがいかに子どもに大きく影響しているかに胸がふさがれます。今の子どもたちの問題を考えるうえで、心に深い傷をもっている親の存在を認識すること。親が少し元気になると、子どもはうんと元気になります。逆に親をきちんとフォローしないと、子どもへの悪影響のなか、問題が家庭のなかで煮詰まっていきます。最近問題になっている、虐待による家庭内殺人などもこういったことの延長にあると考えられます。

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