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 年老いて、病をかかえる母親と、なりゆきから介護をすることになった決して若くない息子との日常。普通なら暗くなりがちな現実を、優しさとユーモアさえ感じさせながら写真やオブジェ、ビデオで表現し、この夏、話題を集めた折元立身さん(54歳)の作品展「ART MAMA(アートママ)」。「介護する日常こそアート」という折元さんの言葉通り、作品のベースに漂う温もりは、まさに折元さん親子の関係そのものでした。
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 うちのばあさんって、すごいんだ。
今回の作品展のオープニングレセプションで、パフォーマンスとして作品の中のビッグシューズを履いて歩いてもらったんだけど、「サンキュー、サンキュー」ってお客さんに声をかけて、大受け。俺の作品そのものを、立体で表現したというか、俺のパフォーマンスより良かったと言われましたよ。お袋は俺の作品のいちばんの理解者なんだけど、「写真には私も写っているんだから、売れたら半分お金ちょうだいね」って言うのには、まいったね。病気があっても、まだまだしっかりしてる。あの世代の老人って、お金がないと不安だし、自分の息子の作品がお金になるってだけで嬉しいんですよ。

 わが家の暮らしは、そのままがアート。俺はだいたい6時半に起きて、味噌汁を作って、ありあわせでお袋と朝食をとるんです。たまに気分が乗らない日もあるようだけど、食器を洗って拭くのはお袋の仕事。少しずつでも仕事がないと身体がだめになるし、そういう意味では足が悪くても車椅子は使わない。だからでしょうけど、トイレやお風呂は自分で行けるし、下着を汚した時なんかも自分で洗濯機を回しています。
 昼食後は、気候がいい頃は毎日マーケットに買物に行って、公園まで散歩していました。写真作品のひとつ「パスポート写真の中の母と私」は、そのマーケットに行くたびに、きょう生きていた証しにと、入口のパスポート写真で、俺とお袋で顔をつきあわせるようにして横と正面から撮った写真を並べたもの。ラッキーなことに顔が似てるから、絵になるんですよね。性格から、シミやホクロの数、声の大きいのまで似てるんだから。また、オブジェ作品「1999年の母の医療と社会福祉」は、ガラス製の大きな標本ケースに、お袋が1年間に飲んだ膨大な数の薬のゴミと病院の薬袋、写真をすべて詰めたものですが、これもお袋の現実の暮らしそのままの作品化。薬を飲み過ぎて難聴になった現在の医療への警鐘でもあるんです。俺は、これからも人が避けて通れない老後をテーマに、おじいちゃんやおばあちゃんとたちと一緒にコミュニケーションアートを作っていきたいと考えています。
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