ガラス張りの運営が人を育て、人を呼ぶ。
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食事の準備は手分けして。グループホーム「いなの家」の食堂 |
けま喜楽苑が開設して、もうすぐ1年。障害のある高齢者が普通の生活を送れるノーマライゼーションの実現を目指す市川さんたちにとって、単なる特養から「地域のケア付き住宅へ」という願いは強い。玄関が2つあるのも、その思いから。1つは事務所横の苑の玄関であり、もう1つは家族が自由に出入りできる家族専用の玄関。来るたびに「お世話になります」と頭を下げなくて済むようにという配慮からだ。それはまた関係者だけが出入りする施設ではなく、「地域の文化の拠点」へ向かおうとする苑の姿勢でもある。
それを力強く支えているのが「民主的運営」だ。喜楽苑では、ホームとデイサービス両方の家族会が結成され、亡くなった方の家族OB会、さらには入居者の自治会もある。ケア内容に対する要望や、運営、地域交流の企画などに加え、入居者の本音も交えて、スタッフとともに活発な話し合いが行われる。しかも、そこにボランティアや市民の参加も望むという市川さん。そうした苑の問題は、地域にすべて公開される。協力が大きいほど、交流が深まるほど、ボランティアも増えていく。その人たちが入居者の自由な生活の大きな支えとなっているのである。
家族の立場からスタッフを指導する係の人もいれば、「お茶・お花倶楽部」で教える人、もうすぐ開店予定の喫茶室の担当者もすでに決まっている。食堂ではコンサートが開かれ、コーラスなどの自主的なクラブ活動も始まった。