部落問題ありのまま vol.1
2007/07/26
あなたは、部落問題をどれぐらいご存じですか?
被差別部落出身であるという出自、あるいは被差別部落に住んでいることなどを理由とした差別は、今もなお生じています。部落差別を助長するさまざまな憶 測や思い込み、そして偏見。そのひとつひとつを一緒に解きほぐしてみませんか? 部落を取り巻くさまざまな問題・現実、そのありのままをお伝えしていきます。
フリーライターとして部落問題と関わり始めてから、丸9年が過ぎた。きっかけは、この「人権情報ネットワーク ふらっと」である。人権問題に関心のあるライターとして、先輩が制作会社に紹介してくれた。それが部落解放運動との出会いとなった。 立ち上げ当初は10人前後の外部スタッフによる制作チームで動いていたが、運営方法の転換などの事情もあり、今も関わっているのはライターのみ。なかでも私はなぜかドップリとはまってしまい、部落解放運動に取り組む人たちと個人的にも親しくなった。 なぜこんなにはまってしまったのか、自分でも不思議である。ひとつ言えるのは、部落解放運動は特定運動団体の専売特許ではなく、実際には実にさまざまな人たちが、あーだこーだと言い合いながら、それぞれのやり方でやっているということだ。その懐の深さと混沌が私にはとても面白い。 そして、フリーランスであり、女であり、母子家庭の母親であり、そのことで少々嫌な思いも味わってきた者として、人の痛みを黙ってさすってくれるような人たちとの出会いに救われた部分も大きい。
まったく違う環境、異なる文化のなかで育ってきた者が仕事を通じて出会うこと自体は珍しくない。しかし、その仕事が人権に関わるテーマとなると、否応な く本人の思想やスタンスや生き方が問われることになる。私たちは、会議で、原稿のやりとりで、酒の席で、
「差別って何やねん」
「そのやり方がほんまに人の心に届くのか」
などと議論しあった。
「ひとりよがりじゃないですか」
と言って、
「何もやってないおまえに言われたくないわ」
と激怒されたこともある。ごもっとも、だ。
けれどもそうして遠慮なく言い合うなかで、お互い本気で考えていると認め合うところがあったのではないかと勝手に思っている。
また、“悪しき同和行政の象徴”として全国的に名前を轟かせてしまった旧芦原病院の問題だ が、たとえば産婦人科(2003年に産科が廃止され、女性科として再スタートした)には、10代での出産を望む女性や性被害に遭った子ども、あるいは風俗 業界で働く女性たちの心身のケアに取り組む看護師や助産師がいた。こうした取り組みの根本には、先に述べたような部落解放運動の精神があったと私はとらえ ている。