人を診る医者でありたい 長尾クリニック院長 長尾和宏さん
2011/10/28
3月11日の東日本大震災以来、ずっと頭から離れなかった被災地。やっと赴けたのは49日目の4月28日でした。ゴールデンウィークを利用して、岩手の遠野、大槌から、宮城、福島の被災三県を聴診器片手に、援助物資を積み込んだバンで南下しました。ちょうど急性期医療から慢性期へ移行する時期。決して報道されない小さな町や避難所、かろうじて残った家々などを訪ね歩き、さまざまな方の生の声に耳を傾けた8日間でした。
16年前に阪神大震災を経験した僕にとって、その規模は桁違いであっても、そこに見た被災者の姿はデジャブでした。16年前、「国」は「個人」への支援を放棄しました。いまだに自宅や職場の二重ローンで苦しんでいる方がいて、阪神大震災は終わっていません。今回の東北が阪神の二の舞を踏んではいけない。まず、どんなに努力しても自力で立ち上げれない人には債務免除が必要です。生活保護以外の新たな国の救済システムを、今回こそ創ってほしい。また、福島県相馬市では震災孤児のための「震災孤児基金条例」がいち早く制定されたことを知り、基金の支援を始めました。子どもたちへの支援は、日本の未来への投資です。同時に、生活基盤救済に取り組む弁護士の支援も開始しました。こうした支援の輪がさらに広がることを祈っています。
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今、日本は、この東日本大震災を機に、国も、われわれ国民も大きく変わろうとしています。行き場のないエネルギーが溜まり、既存のシステムが一気に変わる時が近い。急激に世の中の価値観が変わるパラダイム・チェンジ(根本的変換)が近いと思います。この2~3年ぐらいが次のワンステップへの過渡期で、医療界をはじめ世の中すべてが、新しい枠組みのなかでやっていかななければいけなくなる時が近い将来必ず来る、そう感じています。
(6月28日長尾クリニックにてインタビュー 構成・上村悦子)
長尾和宏(ながお かずひろ) |