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この社会が私の「ふるさと」。だからこそ差別を許さない。 人材育成コンサルタント 辛淑玉さん

2014/01/23


自分たちのメディアをもち、距離を超えてつながる

――誰もが押しつぶされる可能性のある社会だと。

辛淑玉さん

 だから今回は本腰入れてやろうと思ってるんです。ひとつは自分たちのメディアをもつこと。私たちはずっとアナログでやってきたけど、もう電話やファックスで連絡しあっていては勝てません。メディア力の圧倒的な差で負け続けてきたとも言える。ネットの世界をバカにする人は多いけど、ネットの力はすごいですよ。私たちも、罵倒されたとしても入っていかないと。

 そのために、事務所にスタジオをつくりました。この春から「のりこえTV」をスタートさせて、毎日1時間、人権にかかわることをいろいろな視点で伝えます。私たち、仲間はたくさんいるのにつながってこなかった。特に今までアナログで生きてきた人たち、がんばってきた先輩たちとメディアを通じてつながっていきたい。そして私たちは一人じゃないと確認しあって、助け合って、その声が届く仕組みを作っていきたい。直接会いたくても、交通費がないから会えないということもあるでしょう。だからネットで全国の仲間とつながる。声を届け合う。そうしたらものすごい大きな力になると思う。

――自分たちのメディアをもつというのは確かに力になりますね。

 やっぱりどう考えても、やられてる当事者が声を挙げていかないといけない。小さくても何でもいいから、声を挙げることなんですよ。

 じゃあ誰がやるのか。私はかつて広告代理店でセールスプロモーションの仕事をしていました。マーケティングをやってきたわけです。マイノリティとしていろんな経験もして、理解してきた。TVも、出るほうにも作るほうにもいた。政治家も知ってるし、がんばって闘っている人たちともつながってきた。そう考えると、「私がやるしかないだろう」と(笑)。

 東北大震災の直後から、私の周りの力のあるマイノリティは多くが海外に移動したり、外に拠点をつくったりしています。そういう生き方もあると思うけど、それは金と教育とネットワークがあるからこそできること。日々必死に働いて、それでも食べていくだけで精一杯で、海外なんか行ったこともない、「帰れ」と言われる韓国や朝鮮にも行ったことがない在日がいっぱいいるんですよ。

 実はここ数年の間に、友だちの子どもが3人死にました。いずれも自殺だった。在日4世ですよ。4世の子どもたちが死んでいく社会というのは、やっぱり胸が痛いよね。

 それから東日本大震災の被災地に行って、アジアの国々からきた"花嫁さん"たちを見ていたら、私たちのハルモニそのままですよ。日本語のわからない連れ子たちの大変さとか見てくると、もうちょっと時代は進んでいかなきゃいかんと思うわけ。止まったり後退する時もあるだろうけど、それでも二歩下がったらまた一歩前に押し戻していかなきゃ先がないと思うのね。

 それに、私は日本で生まれて日本で育ってますからね。どう考えてもやっぱりここが私の「ふるさと」なんですよ。同じように日本で生まれ育ったけど20代でアメリカに行っちゃった先輩は「大阪は私のふるさとで、アボジもオモニもいるけど、それでもあの国には帰りたくない」と言いました。ドイツにいる友人は「おまえはなぜ出ないんだ?」とも。

 でもどこに行っても一緒だからね。まずは足元をよくしていかないと。「ここでやるしかねぇだろう」って思ってる。

――――ありがとうございました。

(2013年12月10日インタビュー 取材・構成/社納葉子)

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