一人ひとりが「明日の自由」を考えるために あすわか 小谷成美弁護士
2014/09/12
私たちの生活の枠組みともいえる法律だが、「難しい」「関係ない」と敬遠したり無関心になったりしがちだ。改憲や特定秘密保護法も私たちの生活や人生に大きく影響するはずなのに、その内容や意義、問題点がよくわからない。そんな人は少なくないのではないだろうか。「一人ひとりが考え、判断できるだけの情報をわかりやすく伝えよう」と若手弁護士たちが取り組む活動を紹介する。
――会を立ち上げたきっかけは?
私たちは弁護士登録をして15年以内の若手弁護士の集まりですが、言い出しっぺである共同代表(黒澤いつきさん)が自民党の憲法草案を読み、「これはまずい。とんでもないことがおこなわれようとしている。このまま放っておいていいのか」という危機感を抱いて他の弁護士に呼びかけたのが始まりでした。
自民党の憲法草案は、たとえば「すべて人間は生まれながら自由・平等で、幸福を追求する権利をもつ」という考え方を否定して、国が私たちの権利を容易に制限できるとしたこと。また、「国防軍」の創設を宣言して、他国の戦争に参加できる態勢と整えるとしたこと。また「緊急事態」には、内閣が私たちの人権を大幅に制限できるとしたこと。どれも民主主義国家であれば当然保障されるべきものとされてきたことをあっさりと否定し、国家権力が国民を監視、管理するのだと宣言しています。本来、「国家権力を縛るもの」であるべき憲法が、「国家が人を縛る」ものへと変貌しているわけです。未来を担っていく若手法律家として行動しようという呼びかけに、さっそく同期を中心に連絡を取り合い、話し合いました。そして2013年1月に「明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)」を立ち上げました。「私たちには、言いたいことを言って、伝えたいことを伝える自由(表現の自由)がある。これからもその自由を守っていく」という思いをこめています。
メンバーは今、約330人で、弁護士登録期が51期以降(登録から15年以内)の若手弁護士が中心です。
――反響はいかがでしたか?
メンバーはそれぞれ弁護士会のなかの委員会に入っていたり、さまざまな活動に関わっていたりして、そのなかで「あすわか」の紹介などをさせていただいています。そこで「今度、こういう集まりで話してもらえないか」と声をかけていただいたりして、いろいろな方や団体から支援をいただいています。
弁護士がこうした活動をすること自体は珍しくありません。憲法や特定秘密保護法などに関しても、先輩方はまた別の団体をつくってがんばっておられます。
ただ、私たちはこれまでとは違う、新しい運動の形を模索しています。労働組合や人権団体をはじめ多くの市民運動団体がさまざまな活動をされてきて、私たちも多くのことを学びました。一方、どんな集会に行っても参加者の顔ぶれはほとんど同じだったりと共通理解のある狭い世界のなかで完結してしまい、大多数の市民のみなさんとつながれずにきたのではないかと思うのです。
一方、市民のみなさんは今、マスコミしか情報源がないという状況ではないでしょうか。マスコミの情報が間違っていることもありますし、日々いろいろなことが起こるなかでひとつのテーマを深く掘り下げたり、いろいろな角度から考えたりできるような報道はなかなかないのが現状です。私たちも政府やマスコミを批判するだけじゃなく、自分たちの問題意識を広く伝えていく工夫をしなければと強く思っています。