一人ひとりが「明日の自由」を考えるために あすわか 小谷成美弁護士
2014/09/12
――憲法や政治の話を身近な人とは話しにくいと感じている人は多いですね。
私自身も「あすわか」の活動をはじめ、弁護士としては話しますが、プライベートな空間では話しにくいと感じます。中学生の子どもがいますが、保護者仲間にはすごく言いにくいですね。
だからこそ、身近な場所で気軽に話せる場やツールをつくっていこうと考えています。憲法カフェもそのひとつですし、「あすわか」としては、自民党改憲案の内容をイラストでわかりやすく解説したリーフレット『憲法が変わっちゃったらどうなるの?~自民党案シミュレーション~』『2分で分かる!集団的自衛権ほぼAtoZ』や紙芝居『王様を縛る法~憲法のはじまり~』、を発行しました。紙芝居はメールにてパワーポイントのデータとワード形式の台本を配布しています。データそのものは無料ですが、製作費がかかっているので2000円以上のカンパをお願いしています。リーフレットは1部15円で販売しています。どれも発表直後から大きな反響をいただいて、『憲法が変わっちゃったらどうなるの?~自民党案シミュレーション~』は注文が殺到して在庫が一時なくなったり、『2分で分かる!集団的自衛権ほぼAtoZ』は2週間ほどで53000部を売り上げたりと、私たちも驚くほどの手応えがありました。なかなか表に出てこないけれど、多くの人が危機感をもっているのを感じています。
――憲法をはじめとする法律や生活は私たちの生活や人生とダイレクトにつながっているのに、日常生活で実感する機会はあまりなく、学校教育でもそのことを伝えきれてこなかった。そうしたなかで「法律は難しい」「"素人"にはわからない」「専門家に任せておけばいい」という意識が根付いてしまったように思います。
そうですね。ですからまずはみなさんに「知ってもらう」ことだと思います。たとえば憲法について議論する以前に、ほとんどの人が「立憲主義」という言葉や意味を知らないのではないでしょうか。基本的な知識をもったうえでの思考や議論でなければ、感情に流されてしまいます。
ただ、法律用語が一般市民の方にとっては難しいのもわかります。2013年12月に成立した特定秘密保護法も、私たちはおおいに問題ありと思っていますが、まずはどういう法律なのかをわかりやすく伝える必要があると考えています。ちょうど「あすわか」の活動をみていてくださった岩波書店さんから「わかりやすい言葉で書いてみませんか」と声をかけていただいたので、『これでわかった!【超訳】特定秘密保護法』を有志のメンバーで執筆しました。
改憲にしろ、特定秘密保護法にしろ、賛成か反対かで始まるのではなく、まずは内容をよく知って、自分で考えること。それこそが一番大事なのではないでしょうか。
――活動といえば、立ち上げから立て続けにリーフレットや紙芝居を製作されたり憲法カフェを各地で開催したり、声明も次々に出されたりとスピーディーですね。
メーリングリストで情報を日々共有し、やってみてよかったことはすぐ伝え合います。たとえばカフェのチラシはメーリングリストにアップして、それぞれよいところを真似しています。「大学で憲法企画ができないか」と発案した人がいて、それを見た人が出身大学へ売り込みに行って連続講座の開催を実現したこともあります。地方の会員の方が、憲法カフェから始まって、参加者で相談して集団的自衛権について市議会に請願書を提出したり、みんな、楽しそうに、そして自由に動いています。
政治の動きも常にチェックしていて、たとえば特定秘密保護法が成立する見込みが高くなった段階から、成立直後に発表する声明文の準備をしていました。スピードが大事だと思っています。
カフェに参加された方などから「私たちに何ができますか?」と聞かれますが、できることはたくさんあります。憲法カフェにお友達を誘う。自分で憲法カフェを企画してみる。テレビのニュースを観て、意見を番組に送る。小さなことでもみんなが行動に移していけば必ず世の中は変わります。 政治を人任せにしない、「面倒くさい主権者」であり続けましょう。
――ありがとうございました。
(2014年7月インタビュー 取材・構成/社納葉子)
●明日の自由を自由を守る若手弁護士の会
http://www.asuno-jiyuu.com/
●紙芝居データ配信
立憲主義について簡単に紹介する紙芝居風(パワーポイント)データ
「王様を縛る法 ~憲法のはじまり~」申し込み
http://www.asuno-jiyuu.com/p/blog-page_5739.html target="_blank"
●『これでわかった!【超訳】特定秘密保護法』岩波書店 1400円+税