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お年寄りに「生きててよかった」と思える暮らしを ゴジカラ村

2012/03/30


 あなたにとって終の住処とは? 多くの人が連想するのは、住み慣れた「わが家」かもしれない。しかし、現実に老後を迎えて介護や看護が必要になった時、ここぞと思える場所は果たしてあるのだろうか。老いても人が人らしく暮らせる村「ゴジカラ村」を愛知県長久手市に訪ねた。

お年寄りに「生きててよかった」と思える暮らしを 社会福祉法人 愛知たいようの杜・通称「ゴジカラ村」

 名古屋駅から地下鉄で約30分、車に乗り換えて10分ばかりの雑木林のなかに「ゴジカラ村」はあった。
 もし新緑の季節なら、緑萌える木々のあいだを吹き抜けるさわやかな風に迎えられたことだろう。しかし現実は、冷たい雪が吹きつける極寒の日。村を案内してくれたのは、「ゴジカラ村役場株式会社」の職員・田中美貴さんだ。駐車場横にある小さなトレーラーハウスで、見学や取材依頼の対応に追われる毎日だという。

「雑木林」のような多世代交流村

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 約1万坪という雑木林に建つのは、高齢者施設から幼稚園までおよそ10の施設。特別養護老人ホーム「愛知たいようの杜」をはじめ、ケアハウス「ゴジカラ村・雑木林館」、デイサービスセンター「ゴジカラ村」、訪問看護センター「ふれあい」、ヘルパーステーション「ひだまり」、ひたすら遊ぶだけの「もりのようちえん」、託児所「コロポックル」、約200人が通う看護福祉専門学校「もりのがくえん」などが、木々の間を縫うように建てられている。つまり、幼児から高齢者まで多世代が共存する、まさに「雑木林」のようなコミュニティとなっているのだ。

 さらに、「村」を具現化するために150~400年前の古民家が3軒移築され、ひと息つけるカフェもあれば、陶器工房も誘致され、入居者とその家族ばかりではなく、一般の人たちが自由に出入りできる仕掛けがあちこちにつくられている。すぐそばまで住宅街が広がりながらも、雑木林に入れば、流れる時間が緩やかに、人々の動きもゆったり......。時間に追われ、忙しすぎる現代社会とは一線を画する不思議な場所となっている。

 ゴジカラ村は、その名が示すとおり「5時から」の村だという。サラリーマンがアフターファイブを心待ちにするように、誰に管理されることもなく、時間にも縛られず、のんびり過ごそうよといったメッセージが込められているのだ。
「30年前、この辺りも高度経済成長の波にのって区画整理が進むなか、失われていく雑木林や地域のつながりを残したい、雑木林で子どもたちに思いっきり遊ばせたいと、『愛知たいよう幼稚園』が創設されたのがスタートです」と語る田中さん。25年前には、社会福祉法人「愛知たいようの杜」が設立され、雑木林に隠れるように建てられた特別養護老人ホームでお年寄りの暮らしが始まった。