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ふらっとへの手紙



ふらっとへの手紙from吹田vol.5

2010/10/27


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 オイコクレジット・ジャパンは開発協力のための協同組合オイコクレジット(本部・オランダ)の、日本で唯一の支援組織ですが、これを広報し、投資者を募っていくのは、「千里の道も一歩から」のような活動です。私が事務局長になった07年は、融資額約560万円(融資者数不明)でした。

 何よりまず、「銀行に預けたあなたのお金は軍事産業に融資されているかもしれませんが、オイコクレジットは社会的に有益な組織への融資に使われます。お金の預け方を変えることによって、居ながらにしてあなたも国際貢献をしませんか」と呼びかけなければなりません。
 幸い私は、フェアトレードについて、大学や高校、経済団体などで講演することや、アースデー(東京、大阪、神戸)やワンワールド・フェスティバル(大阪)など国際協力のイベントに参加する機会が多いので、そんな時に、オイコクレジット・ジャパンのことについても話しました。

 よくあるのは、「オイコクレジットの具体的な融資先は?」という質問です。

 たとえば、国際価格の変動に翻弄されやすい中南米のコーヒーやカカオの生産組合。ボリビアの約1600世帯のカカオ生産社が加盟する協同組合連合で、ヨーロッパのフェアトレード団体とも提携してよい製品を供給しているエル・セイボなど。零細農家や生業資金を提供し、所得の向上と貯蓄を促進している南アフリカのマイクロファイナンス機関、SEF。イギリスと日本に拠点を置き、インドのオーガニック・コットンやバングラデシュの伝統的な手織り布を使った衣料品などを輸入販売して途上国の約3000人の生産者に収入の機会をつくっているフェアトレード団体ピープル・ツリーなどの名前を挙げます。

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「オイコクレジット・ジャパンは金融機関とは違うのですか」という質問には、「民法上の任意組合で、金融機関ではありません。銀行法の規定により、金融機関以外の団体が元本や配当や儲けを約束して不特定多数の人に投資の呼びかけを行うことはできません」と答えた上で、「ただし、1974年のオイコクレジット設立以来、30年以上の取り組みの中で、投資金の元本割れを起こしたことが一度もないんですよ」と伝えます。

 なかには「海外よりもまず国内に目を向けるべきではないですか」と質問されることもあります。そんな時は「現在世界中には1日1ドル以下で暮らす貧困層が14億人います。貧困は全ての人の問題だから、他人事ではない。日本に暮らす私たちも大きな責任を担っているのですよ」と答えます。
 世界銀行によるバングラデシュでの調査では、マイクロファイナンス機関の融資によって毎年顧客の3%が、さらに地域の経済活動の波及効果により顧客以外も1%が貧困から脱出。結果14年間で40%の貧困削減につながったというデータも出ているんです。

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 オイコクレジット・ジャパンの現在の出資者(組合員)は69人。出資金は累計約2000万円となりました。多くは一口(1万円)の出資ですが、「直ちに必要としないお金をそちらに預ける」と100万円単位で出資してくれた会社員や公務員もいて、手応えを感じてきているところです。

 みなさんの出資金は、オイコクレジット・ジャパンから、原則年2回、オランダ本部に米ドルで送金。2010年6月末のオイコクレジット全体の資本残高は4億4600億ユーロ(約506億円)、融資プロジェクトパートナー数818、マイクロファイナンスプロジェクト数561、そしてマイクロファイナンスパートナーから恩恵を受けている人数は1750万人と報告されています。ちなみに融資対象国のトップ3は、インド、ボリビア、ペルー。
 私は、この6月に、ブラジルのフォス・ド・イグアスで開催されたオイコクレジット年次総会に参加して、世界20数カ国から集まった同士と、今後の方向性などについて議論してきました。機関投資家へのアプローチや商業的な金融機関との協力が今後の課題です。

 オイコクレジット・ジャパンの活動は、ハードルが高いだけに面白い。やりがいがある。しかし、食えない。私は若い頃に商社勤めをしていたために、すでに年金を支給されているので、この活動を続けていける状態です。次世代が、この活動で食えるようにするのも私の役割だと思って頑張っています。(談)

●オイコクレジット
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