ふらっとへの手紙from吹田vol.1
2010/01/22
昨年は、イオン・ダイエーが880円、西友が850円、ユニクログループが990円......と、大手小売店が次々と激安ジーンズの販売を始めるなど、安売り合戦がずいぶん話題になりましたし、100円ショップも好評を続けているようです。この不況の中で、消費者にとって安くモノが買えることは、喜ばしいと思っている人も多いと思います。
しかし、私は「ちょっと待って」と申し上げたい。安売りは一見、庶民の味方のようですが、手放しで喜べない側面があるのをご存知でしょうか。
こういった安売り商品のほとんどは、発展途上国で生産されたもの。先に「いくらで売りたい」という販売価格を設定し、その実現のために材料や物流などのコストを計算した上で、生産者からの仕入れ価格が設定されます。つまり、立場の弱い途上国の生産者にしわ寄せがゆく。結果として、安い価格を提示されるため、生産者たちに劣悪な条件の下での低賃金労働が強いられるのです。
タイやバングラデシュ、ベトナム、中国などでは1日10時間、休みは月に2日だけという条件で働き、月収1万円(日本円換算)ほどという人が大勢います。中国のある町では、生産現場が外部から見えないように、鉄縄が張り巡らされているとのこと。児童労働も少なくありません。コーヒー、バナナ、カカオのような食品や、手工芸品などの品目を生み出す場も同様で、200円で販売されるチョコレートを例にあげると、カカオ生産農家が手にできるのはわずか16円(8%)。仲買人の手に14円(7%)、輸入業者に28円(14%)、チョコレート製造業者と販売店にそれぞれ56円(28%)がわたる(残り30 円=15%は販売国に徴収される税金)とのデータがあります。
ましてや、需要の変化によって「もう要らない」となると、たちまち生産者は仕事を失う。これでは、途上国の人たちは「働けど働けど、我が暮らし楽にならず」そのものです。
以前、あるフェアトレード団体が、量販店などに「安売り衣類は、どこで、どのようにして生産されているか」を問うアンケートを試みましたが、「企業秘密だ」「(この部署では)分からない」といった回答しか返ってきませんでした。企業はこうした取り引き形態を認めようとしないのでしょう。一方、先日高校生に「衣類を買うときに、何を重視するか」とアンケートを取ると、圧倒的に多かったは「価格」で、デザイン、流行、品質、耐久性などが続き、「生産方法」へのチェックは皆無でした。大人も同様でしょう。
消費者が安売りを受け入れれば受け入れるほど、企業論理が働き、途上国の生産者に低賃金労働を強いる仕組みがエスカレートしていっているのです。
これに対して、私がかかわっているフェアトレードは、文字どおり"公平な貿易(取引)"。途上国の生産者に「健康で文化的な生活ができ、子どもを学校に通わせることができる賃金」を払うことを第一義にした貿易です。
安売り商品の「値段」の流れと正反対で、先に生産者の賃金を設定し、そこにコストを上乗せし、販売価格を決めていきます。量産店で販売される品より、どうしても高くなるのが辛いところですが、消費者がフェアトレードの商品を買うことが、途上国の人たちの継続的な支援にそのままつながる。非常に身近な発展途上国支援活動なんです。ちなみに、私が事務局長を務めるNGOの「サマサマ」は、インドネシア語で「お互いさま、ありがとう」という意味。
あなたも、衣類や食品などを買う時、商品の価値を見る軸を少し変え、生産者に思いを馳せてみませんか。(談)
●「NGOフェアトレード・サマサマ」のHP
http://homepage2.nifty.com/samasama/