野宿する人が増えているのはなぜ?
公園や河川敷でテントや小屋をつくって野宿生活をしたり、駅周辺で段ボールや毛布にくるまったりして暮らしている人たちが増えていますが、なぜですか。
厚生労働省の2003年の発表によれば、全国で2万5000人程度の野宿生活者がいます。また、いくつかの野宿生活者支援組織の集計によると約3万人の野宿生活者がいるといわれています。野宿生活者が急増したのは90年代後半以降で、その原因としては、まず、経済不況の影響が考えられます。特に建設産業で日雇い労働者として働いていた人びとは、この時期の建設不況によって仕事を失った人が多く、なかでも単身の高齢者はその影響をもろに受けました。そして頼れる身内や友人もない人びとが野宿生活を強いられるようになったのです。さらに、それ以外の産業でも経済不況に伴い失業者が増えていることが挙げられます。こうした失業者のなかには、生きる意欲を失ったり家族の支え合いの基盤を失ったりした人びとがいます。また、借金苦から家を出る人びとも増えています。近年、家出をする中高年男性が増えていますが、その一部が野宿生活をしていると考えられます。
このようにして野宿生活者が増えてきたわけですが、忘れてはいけないもう一つの点があります。社会的に困難を抱えている人びとに対する最低限の生活の保障が憲法でうたわれているにもかかわらず、野宿生活者の救済・自立支援策が十分に行なわれてこなかったことが、野宿生活者の増加につながったことです。