野宿者を支援する制度はないのか?
野宿生活者も含めて、貧しい人びとに対しては社会保障の制度で救済されるはずですが、なぜ多くの野宿生活者はそのまま放置されているのですか。
生活に困っている人びとの救済策として、生活保護制度があります。野宿生活者もこの制度によって救済され、アパートでの生活支援(居宅保護)や社会福祉施設での生活(施設保護)が受けられるはずです。しかし、制度を運用する地方自治体の多くは、「アパートをもたない人には、十分な保護を行なえない」、あるいは野宿生活で住所をもたない人は容易に就職できない現実があるにもかかわらず、「就労能力があるので保護はできない」などを理由に、野宿生活者への生活保護の適用を拒否してきました。
日本の社会保障制度は、形式的にはかなり充実していますが、実際には、条文どおりに運用されず、多くの人びとが生活困窮状態で放置されています。その典型的な存在が野宿生活者だといってよいでしょう。こうして、野宿生活者が公園や河川敷で不安定な暮らしを余儀なくされているのです。しかし厚生労働省は2001年から野宿生活者問題の深刻化にようやく目を向け始め、各自治体に、野宿生活者の生活保護への適用を拡大することを指示しました。2002年には「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が国会で議論され、可決されました。野宿生活者問題を抜本的に解決する施策が求められています。