知人から性行為を強要された。周囲に信じてもらえず、毎日がつらい
知人から望まない性行為を強要されました。それ以来人間が信用できなくなり、ちょっとした物音や他人の視線にも過敏になり、外出もままならなくなりました。友人に打ち明けたのですが「あの人がそんなことをするなんて信じられない」「あなたも軽率だったんじゃないの」と言われ、かえって傷つきました。つらい気持ちを誰にも言えなくなり、自分を責め、死にたいとさえ思います。私が悪かったのでしょうか。このまま黙って忘れるしかないのでしょうか。
相手が望まない性行為を強要するのは、性暴力〈解説〉というれっきとした犯罪です。人間としての自由と尊厳を踏みにじる卑劣な行為です。あなたが傷つき、周囲に対して過敏になったり、他人を信用できなくなるのも無理はありません。そういう事態を招いたとして自分を責めてしまう気持ちもわかります。しかし悪いのはあなたではなく、加害者です。どんな状況であろうとも、相手が望まない行為を強要する権利は誰にもないのです。
そのことを踏まえたうえで、いっしょにこれからのことを考えましょう。
まず、婦人科を受診されることをおすすめします。身体に目立った傷がなくとも、体内に傷を負ったり、細菌に感染している場合もあります。これ以上つらい思いをしないためにもあなた自身の身体を十分にケアしてあげてください。
性被害は、「見知らぬ他人から」「夜間」「人気のない屋外で」受けるというイメージがありますが、実際には、「知り合いから」「昼間」「屋内に数人がいた状態の時」にも受ける場合が多々あります。
その場合には被害そのものの痛手に加え、人間関係や信頼関係が壊れるという痛手も負うことになります。それらを一人で乗り越えるのはとても大変です。専門相談機関では、具体的な対応策の相談やフェミニスト・カウンセリングを受けることができます。プライバシーも厳守されますので、安心して連絡をとってみてください。
【解説】性暴力
性暴力とは、女性の性と尊厳に対する侵害行為であり、被害者の心と身体を深く傷つける。強姦(レイプ)、ストーカー行為、ドメスティック・バイオレンス、痴漢、セクシュアル・ハラスメント、売買春、ポルノなどはすべて性暴力。レイプに関しては、たとえ夫婦や恋人のような親しい関係にあるカップルでも、望まない性行為はすべてレイプといえる。加害者を弁護し被害者を非難する「迷信」がいろいろあるが、被害者がどんな服装をしていたとしても、また、どんな行動をとったとしても、レイプが正当化されることはない。被害者にはなんの責任もない。
また、被害を受けた人が友人や家族に告白したり、病院や警察に行くと、会話や診察や聴取の過程で、さらに二次的な苦痛(セカンドレイプ)をこうむることがある。社会全体で性暴力を克服するためには、被害者でない人びとが、正しい情報を知る必要がある。