暴力をふるう夫と別れたいが、子どものためには我慢すべき?
夫からの暴力で悩んでいます。いわゆる「できちゃった結婚」で丸4年、3歳半になる子どもが一人います。結婚する前から、ののしられたり、きつい言い方で責められたりといった言葉の暴力はあったのですが、私の父親も母親に対して厳しい人だったので、「まあ、こんなものか」と思っていました。妊娠中に大げんかになり、お腹をけられて流産しかけたことがありました。その後もことあるごとに「おまえは気がきかない」「役に立たない」と言われ、殴られたり、けられたりしてきました。暴力が始まるきっかけは、ごくささいなことで、それほど悪いことをしたとはどうしても思えませんが、反論するとますますひどくなるので謝り続けるしかありません。ところが暴力はどんどんエスカレートする一方で、最近は夫の顔を見るのもこわくなりました。子どもにも手を上げることもあるので、子どもも父親を嫌っています。それがまた夫は腹が立つようです。子どもには父親が必要だと思い我慢してきましたが、最近は、このままでは私にとっても子どもにとってもよくないと思い始め、別れるかどうか迷っています。
とてもつらい思いをしてこられましたね。妊娠中のできごとや子どもに対する暴力にも心が痛みます。あなたもDVの被害者といえます。
多くの場合、男性が暴力をふるう理由はささいなものです。本当の理由は「自分の力を誇示したい」からなのです。満たされない感情のはけ口が自分より力の弱い妻や女性、子どもやペットなどに向かうのです。決してあなたが悪いわけではありません。
ただ、暴力はエスカレートする傾向にあり、長期化するのが特徴といわれます。家庭という密室の中で行なわれる暴力は、隠され、ひどくなることが多く、残念ながら夫が改心することを期待するのは難しいでしょう。あなたがいくら我慢しても、努力しても…です。あなた自身のこれからのこと、特に経済的な不安や子どものことなど心配なさっておられるようですから、一度相談してみてください。配偶者暴力相談支援センターなどのDV専門相談窓口のほか、行政(女性センターなど)やフェミニスト・カウンセリングルームなどの民間団体、弁護士会でも相談できます。信頼できる専門機関に勇気を出して足を運んでください。一人で悩んで解決できる問題ではないのです。
【解説】DV(ドメスティック・バイオレンス)防止法
「DV防止法」は正式には「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」といい、2002年4月1日に全面施行された。DVは夫や恋人など親密な関係にある者によって行なわれる暴力であることから、外部からは見えにくいうえ、これまでは「夫婦げんかは犬もくわない」などと見過ごされてきた。しかし、いかなる理由であれ暴力は許されるものではなく、近年、DVによる被害者が増加し関心が高まるなか、被害者保護の必要性が認識されることとなった。「DV防止法」では、配偶者による暴力は犯罪であると明確に規定し、「保護命令」の違反者には罰則も設けられている。