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ちょっとしたことですぐ殴る夫。私が悪いから?

夫はちょっとしたことで怒り出し、「俺を怒らせるおまえが悪い」「食べさせてもらって、文句を言うな」などと言ってはすぐに殴ります。こわいので、怒り出したらひたすら謝り続けるのですが、必ず殴られます。気がすむと人が変わったように優しくなり、「俺が悪かった」と謝ったりします。でもまた同じことが起きるのです。何度も殴られるのは、やはり私が悪いからでしょうか。

暴力はささいなことがきっかけで、これといった理由もなく始まるケースが多々あります。けれども、たとえ暴力に至るきっかけを女性がつくったとしても、それが暴力をふるってもいいという理由にはなりません。言い争いになって妻からなじられ、思わずカッとなり殴ってしまったという場合でも、「妻が口答えしたから」などと正当化することはできません。暴力によらない選択肢もあるはずです。いかなる暴力も犯罪なのです。
夫や恋人からの暴力は、社会的に不平等な男女の力関係から生まれるものです。暴力とは殴る・けるといった身体的なものに限りません。相手を威嚇したり、おとしめたり、無視するなどして、精神的に傷つけることも暴力といえるでしょう。暴力を受けているあなたが悪いのではありません。暴力で相手を傷つけることによって自分のバランスをとろうとする相手が悪いのです。
ドメスティック・バイオレンス(DV)は、女性差別の意識と暴力を容認しがちな風潮が生み出した、女性への人権侵害といえます。特殊なことではなく日常のなかで誰にでも起こりうるのです。

【解説】ドメスティック・バイオレンス(DV)
ドメスティック・バイオレンス(DV)は、夫・恋人など親密な関係にある者からの暴力のことをさす。男性が体力的にも社会的にも強い立場にいることから、一般的に男性から女性に対する暴カをいう。英語の「ドメスティック・バイオレンス」を直訳すると「家庭内暴力」だが、日本では従来から親子間の暴力をそう呼んでいたため、それと区別してDVという言葉が使われている。
暴力の内容をカテゴリー化すると、殴る・けるなどの「身体的暴力」、セックスを強要するなどの「性的暴力」、生活費を渡さないなどの「経済的暴力」、外出を制限するなどの「社会的暴力」、罵声を浴びせるなどの「心埋的暴力」がある。
「夫婦げんかは犬も食わぬ」と片づけられてきたDVが、ここ10年余りのあいだに社会問題として大きく取り上げられるようになり、行政や民間での支援制度も徐々に整ってきている。
DV専門ではないが、各都道府県の女性相談所(婦人相談所)または女性相談センター、母子寮や福祉施設などがDV被害者の緊急一時避難所として機能しているケースもある。また、民間シェルターも少しずつだが増えてきている。
暴力をふるわれて無気力になっている女性が、自分を取り戻し、事態を前向きに考えようとするときに、サポートするカウンセラーや自助グループは非常に大きな意味がある。また、DVは暴力をふるう男性の問題なので、男性が怒りをコントロールして、女性と対等なコミュニケーションをするための非暴力プログラムも整ってきている。地域の女性センターなどでも、女性または男性を対象とした講座やワークショップなどが開催されている。