近所の子どもが虐待されているようだが
近所に住む子ども(5歳の男の子)の顔や身体に生傷が絶えません。態度もオドオドしていて、痛々しいのです。親に虐待されているようで気がかりなのですが、近くに住む者としてどうかかわればいいのでしょうか。
虐待の早期発見は、虐待されている子どもだけでなく、虐待をしてしまう保護者にとっても大きな救いとなります。虐待は子どもの身体のみならず、心にもはかり知れない大きな傷を残します。また、虐待されていた期間が長ければ長いほど、心の傷の回復には長い年月が必要です。
虐待してしまう保護者にも「誰かに止めてもらいたい」という思いがあったり、自らSOSを発信している場合も少なくありません。そのサインをキャッチし、虐待を早期に発見することは、家庭という閉ざされた環境のなかで虐待がエスカレートするのを防ぎ、その家庭へのより早い援助へとつながります。
虐待に至ってしまう家庭は、近隣の人や親せきからも孤立していることが多く、身近に育児の悩みなど相談できる人もなくて、一人で悩みを抱え込んでしまっていることが多いのです。保護者を責めるのではなく、いっしょに考えようという姿勢で声をかけ、子育ての大変さを共有できるようなかかわりが大切です。
【解説】児童虐待
2000年11月に施行された児童虐待防止法(「児童虐待の防止等に関する法律」)の第2条に児童虐待の定義が明文化された。この法律において、児童虐待とは、保護者(親権者あるいは未成年後見人など、児童を実際に養育している人)が子どもに対して、次に挙げる行為をすることをいう。「虐待かしつけか」についてはよく論されるが、大切なことは、たとえ愛情に根ざしたしつけのつもりであっても、親の行為が子どもに著しい害を及ぼすものであれば、それはまさしく虐待だということ。
児童虐待には四つのタイプがあり、実際には、これらのタイプが重なることも多い。
(1)身体的虐待殴る、ける、たばこの火を押しつけるなど、生命・健康に危険のある行為
(2)性的虐待子どもへの性交や性的行為の強要、性器や性交を見せるなどの行為
(3)ネグレクト(保護の怠慢・拒否)病気やけがをしても適切な処置を施さない、乳幼児を家に置いたままたびたび外出する、適切な食事を与えない、極端に不潔な環境で生活させるなど、健康状態や安全を損なう行為
(4)心理的虐待子どもの心を傷つけることを繰り返し言う、無視する、他のきょうだいと著しく差別的な扱いをするなど、心理的に傷つける行為
全国の児童相談所での児童虐待相談処理件数は、1999年度1万1631件、2000年度1万7725件、01年度2万3274件、02年度2万4195件と年々増加しており、いっそうの取り組みが求められる。