ふらっと 人権情報ネットワーク

ふらっと相談室(Q&A)



躁うつ病と診断された。どんな病気?

実家の母が亡くなった後、体調がすぐれないため医師の診察を受けたどころ、躁うつ病との診断を受けました。けれども、どのような病気なのかよくわからず、不安です。どんな病気で、どのような症状が出るのでしょうか。

なじみのない病名を告げられ、驚かれたことでしょうね。躁うつ病とは、統合失調症と並ぶ、代表的な「こころの病」です。精神疾患の分類法では、気分障害(または感情障害)と呼ばれています。
躁うつ病は歴史も古く、ヒポクラテスがうつ状態をメランコリーと名付け、それが躁状態に変わりうることを記載した歴史にまでさかのぼることができます。「躁うつ病」という疾患名は1899年にドイツの精神科医クレペリンが提唱したのが始まりで、統合失調症に相対する病態として位置づけられました。
躁うつ病がどのくらい存在するのか、ということについてはさまざまな統計があります。典型的な躁うつ病は人口当たり約0.4%と推測されていますが、うつ状態も含めるとさらに増えます。ショックな出来事や悲しい体験によって気分がうつ的になった体験のある人は決して珍しくないように、5人に1人くらいは一生に一度はうつ状態を体験するという報告もあります。一般に内科を受診する患者さんの約10%に、気分障害と考えられる精神医学的問題が認められると言われています。
「躁」や「うつ」という言葉は現在では日常生活の中でも普通に使われるようになってきているようですから、躁うつ病の症状も比較的理解しやすいものであるかもしれません。「うつ」の時期は「気分が沈む、何をしても楽しくない」「何に対しても興味がなくなり、意欲がなくなる」「急に悲しくなり涙がでる」等の症状が表れます。これらの症状は朝のほうが夕方より強いのも特徴です。
また、「夜中に何度も目が覚める、朝早くに目が覚める」といったタイプの不眠症状も認められます。さらに身体に表れる症状として、動悸や便秘がひどくなる、食欲がなくなり体重が減少するなどがあります。逆に、「躁」の時期は「意欲が異常に出て、気分が高揚する」「睡眠時間が短くなる」「異常によくしゃべる」「お金を浪費する」などの症状が出現します。
「躁うつ病」というものの、「躁」と「うつ」を交互に繰り返す人もいれば、「うつ」だけが何度も出現する人もいます。また「うつ」の時にはこころの症状よりも、先ほどあげたようなさまざまな身体の症状が全面に表れる人もいます。体調がすぐれず内科で検査してみたが何も異常がないという人で、うつ病が背景に隠れていることもあるのです。それとは逆に、高齢者の場合は身体の病気が原因で「うつ」の状態になっていることもありますから、内科的な検査もきちんと受けておくことが必要です。
症状についていろいろ書いたので、かえって不安に思われるかもしれません。けれども先に述べたように、症状の表れ方は人それぞれです。「こういうことも起こりうる」という認識だけはもっておいて、あとは医師と相談しながら気長にきちんと治療をしていきましょう。