統合失調症(精神分裂病)の症状と経過は
精神分裂病の症状はどのようなもので、どんな経過を経て治るのでしょうか。
一般的な症状は、回復までの経過を主に3つに分けて考えることができます。
(1)前兆期
このころは本人も周囲の人もまだ精神的に異常があるかどうか判断できませんが、「何となくしんどい、落ち着かない」、「音が異常に気になる」、「周囲に何となく違和感がある」、「眠りが浅くなってきた」などの自覚症状を感じ始めます。たとえば、風邪のひきはじめに「少し身体がしんどいなあ」と感じるのに似ています。前兆期の症状は再発の前にも現れます。ですからこの時期の症状をよく認識しておくと、再発を防ぐことにつながります。
(2)急性期
前兆期の後、何らかの生活上のきっかけの後に急性期の症状が現れます(きっかけがはっきりしない場合も多くあります)。この急性期が本人にも家族にも最も辛い時期です。眠れなくなり、考えがまとまりません。気分も不安定で落ち着きを失いがちです。自分の行動に対する誰かの悪口が聴こえる「幻聴」があったり、「監視されている」「狙われている」という「妄想」が現れたりもします。幻聴や妄想は周りの人々には理解しがたいことも多いですが、これは病気のために何が現実で何が現実でないのかを判断する力が損なわれがちになってしまっているために起こる症状です。ですからこの時期は静かな環境でゆっくり過ごし、充分な睡眠をとって心の疲れをとることが大切ですし、周囲も本人が静養できるようにする心遣いが大切になります。
(3)慢性期
慢性期の症状は精神分裂病(統合失調症)の経過のなかでも重要な意味を持ちます。一般に身体の病気になったとき(たとえ風邪をひいたとき)、重い症状から回復し、ほとんど治療がいらない状態になってもしばらくは「何となくしんどい状態」、俗に「病み上がり」といわれる状態があります。慢性期の症状はこの「病み上がり」に似ています。ただし、身体の病気と違うのは、この「病み上がり」の時期が長いことです。急性期ではかなりの精神エネルギーを消耗するので、それを取り戻すには長い時間がかかることが多いのです。この慢性期の症状は「意欲が出てこない」「何となくしんどい」「楽しい、悲しいなどの感情が湧いてこない」などです。このような症状は時に「怠けているのでは」と思われることもありますが、確かな症状の一つです。「怠けている」と周囲が誤解するのは、本人にはとても辛いことです。ですから周囲の人も慢性期の症状について正しく理解することが重要になります。