6.ホルモンや性別適合手術を考えているが...
男性として30年余り生きてきましたが、女性になりたいという願いは消えることがなく、ここ数年は女性として生活する時間を取っています。しかし体格は大きく筋肉質、体毛も濃いため、キレイな女性にはとうてい見えません。この状況を改善するためにはホルモン投与をするべきでしょうか? 将来的には性別適合手術(※いわゆる性転換手術)も受けたいと思っています。
いったんホルモンや性別適合手術などをしてしまうと、元に戻すのは無理なので慎重に考える必要があります。
今後、自分はどう生きていくのか、そのためにはどのような措置が望まれるのか、その中でホルモンや手術が本当に必要なのか。まずはじっくり検討してください。
また、薬には副作用もありますし、ホルモンの効果は個人差も大きいです。手術もまた万能の魔法ではありません。冷静に、あくまでも限界を持った一手段として選択するのでなければなりません。
そのうえで、やはり自分の身体としてはもっと女らしいほうがよい、そういう身体のほうが自分にとって本当であり、自分で自分を身体的にも好きになれる――と強く思えるのであれば、ホルモンや手術にて自分の身体を改変することも、決して悪いことではないでしょう。
いずれにしても、ホルモンや性別適合手術を視野に入れているのであれば、性同一性障害の専門外来がある医療系機関を訪れるのがよいかもしれません。トータルなカウンセリングの中で、今後の方向性も自ずと見えてくるのではないでしょうか。
ただ、身体改造の動機として、もっと外的なもののほうに重心があるのなら、何らかの後悔に至る危険性も高くなると考えられます。
例えば「堂々と温泉に行きたい」など、他者の視線をクリアする目的のみで、自分自身は自己の身体に嫌悪感がないようなケースですね。あるいは恋人の要望とか。
また、昨今は性別適合手術が性同一性障害者の性別特例法が適用されるための要件となっているために、戸籍上の性別を訂正するためだけに消極的に手術を希望する事例もあると聞きます。
本来的にはこのような場合には、メスを入れるべきは本人の身体ではなくて、社会のしくみや在り方のほうなんですけどね。
※「特例法」(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)
2004年より施行されている法律。
医師から性同一性障害であるとの診断を受けていることを前提に、性別適合手術によって生殖機能が除去され外性器の外観が整えられたうえで、さらに婚姻関係にある配偶者がおらず、未成年の子もいないといった要件を満たした成人は、家庭裁判所にて戸籍の性別の訂正が可能と定められている。
これにより、トランスジェンダーが生活上の性別と書類上の性別のくいちがいに不利益を強いられる問題が解消可能となったが、要件が厳しすぎるという声もあるなど、まだまだ万全ではない面もある。