12.学校で「男女」の区分が明確なのがつらい
公立中学校に通う「女子」生徒です。でもどうやら性同一性障害みたいです。男子になりたくてしょうがありません。親も心配するだろうから、ガマンできるところはしていますが、女でいるのは苦痛です。女ばかりになる体育の時間は特に落ち着けません。男の子たちと同性として友達になりたいです。中でも毎日死ぬほどイヤなのは制服のスカートです。はくたびに「オマエは女だ」と言われているようだし、制服のせいでみんなもボクのことを女だと決めつけます。なんとかならないでしょうか。
毎日のことだけに、その大変さは想像に余りあります。
まずは、あなたは悪くない。あるべき自分でありたい、なりたい自分になりたいと願っているだけなのですからね。自分で自分を好きでいられるような納得のいく自己表現が、社会が築いた性別の壁を越えてしまうというただそれだけのことで、その実現が阻まれてしまうというのは、そりゃぁその社会が築いた壁のほうがオカシイわけです(「性同一性障害」というのは、そんな「壁」が障害物となっている状況を、便宜的にその人のほうに内在する病気だと解釈して名付けた言い回しです)。
つまり、あなたの状況は男女に明確に区分して成り立っている社会の秩序が、あなたのありのままの自分と摩擦を起こしているだけなのです。
特に学校という限られた範囲内では、逃げ場がない中で、制服や校則、体育に更衣室、トイレもそうですが、男女別のシステムが張り巡らされています。「さん」「くん」の呼び分けや何かの班分けの際にも男子か女子かで区分する習慣が幅を効かせています。そうしたものが日々の学校生活と密接に関わっているために、あなたの自然な在りようとの食い違いが、鮮明になり続けるんですね。
そして、これをふまえると、対策も考えやすくなります。そういった有形無形の男女別の体制によって問題が生じる場面ひとつひとつを具体的に想定し、それぞれに可能な限りの改善策を講じることで、あなたの大変さも多少は軽減するのではないでしょうか。例えばトイレや更衣室に特別な区画を設けるような対応をしている学校もすでにあります。名簿や制服などもその気になれば柔軟な運用はいくらでもできるものです。
一度、そのあたりを親や先生をまじえてじっくり話しあってみるのはいかがでしょうか。
加えて、この機会に自分をしっかり見つめ直し、将来の目標をどのあたりに置くか、丁寧に考えてみるといいかもしれませんね。
なお、どうしてもうまくいかないようなら、学校には行かないという選択肢もないわけではありません。いわゆる不登校者向けのフリースクールなどで学んでいる人もたくさんいますし、それは決して世の中から脱落したことにはなりません。
また、性同一性障害専門外来などの医療機関の受診はその必要性が強く感じられないなら必須ではありませんが、将来においてホルモンや性別適合手術などの可能性があるなら、早めにカウンセリングなどは受けておいたほうが、何かあったときのサポートはスムーズです。