8.同性のパートナーと法的保護を受けるには?
今、同性のパートナーと暮らしているのですが、もし私やパートナーに何かあった時が心配なので、何かいい方法はありませんか?
日本においては同性同士の結婚が認められていませんので、カップルの一方が死亡した場合、生き残ったパートナーには法定相続権が認められていないため、何の法的保護も受けることができません。カップルで同居している際には、死亡した人が単独で住宅の所有者や賃貸名義人である場合は、残されたパートナーに所有権や賃借権が認められないために、住む場所を失うことも考えられます。また、パートナーが病気やけがで入院や手術の必要がある場合、法律上の家族には面会や医療上の同意権が通常は認められていますが、法律上の家族でない同性のパートナーには、それらの権利が医療機関によっては認められないこともあります。
その代替策として、同性同士のカップルでは養子縁組を利用することができます。民法第792条で「成年に達した者は、養子をすることができる」とされ、パートナー二人ともが日本国籍をもち、20歳以上であれば養子縁組をすることができます。また民法793条で「尊属又は年長者は、これを養子とすることができない」とされていることから、年上の者が養親となり、年下の者が養子となります。
養子縁組の効力としては、養親の氏を称することや養親の戸籍に入ることになります(民法第810条)。養子縁組によって養親と養子、養子と養親の血族には法定血族関係が生じます(民法第727条)。養子となった者は実子と同等の法的権利を取得します。養親が死亡した場合には、遺言がなくても当然に相続人としての権利があります。当事者の合意に基づく普通養子の場合は、相続権が発生したからといって、実親との親子関係がなくなることはありません。
また、同性同士のカップルが公正証書で遺言や共同生活、療養看護についての合意書を作成して、法的権利を主張することができます。公正証書とは、契約や遺言などの法律行為や財産権などの私権に関する事実について公証人が公証人法施行規則で定めるところにより作成される証書のこと(公証人法第1条)です。訴訟などにおいては強い証拠力をもっています。
日本においても、旧来の禁治産、準禁治産制度に代わって、2000年に「任意後見制度」が制定されました。これは、結婚などの法的保護が受けられない同性同士のカップルにとって、将来、自分自身やパートナーの判断能力が病気やけがなどで不十分になった時に役立つ制度です。事前にパートナーや友人と療養看護や財産管理について任意後見契約を結んでおき、公正証書にしておきます。そして、自分やパートナー、友人に何かあった時に、任意後見人は家庭裁判所が選んだ任意後見監督人のもと、本人に代わって療養看護や財産管理などを行うことができます。任意後見契約は、誰を任意後見人にするか、後見内容の何を委任するかは自由に話し合いで決めることができます。