2.「同性愛」「性同一性障害」とは?
「同性愛」と「性同一性障害」は同じなのではないのですか?「同性愛」と「性同一性障害」とは、どう違うのですか?
「同性愛homosexual」とは自分と同じ性別の人を性愛の対象とすることで、「自分は男であり、男を求める」「自分は女であり、女を求める」というような感情を指します。そのような感情を常習的に持つ人のことを「同性愛者」と称し、日本では男性同性愛者のことを「ゲイ gay」、女性同性愛者のことを「レズビアン lesbian」と呼びます。
性同一性障害とは「自分の肉体がどちらの性に所属しているかを認識していながら、人格的には別の性に属していると確信している状態」と定義されています。つまり「体は男だけれども心は女」「体は女だけれども心は男」というような状態を指します。
恋愛から性愛までの関心がどのような対象に向くか(例えば「男性が好き」「女性が好き」)ということを「性指向sexual orientation」と言います。また、自分自身の性をどのように捉えるか(例えば「自分は男性だ」「自分は女性だ」)ということを「性自認 gender identity」と言います。ですから、同性愛とは性指向において、性同一性障害とは性自認において、少数者(マイノリティ)であるということになります。
なお、性指向が異性、同性共に向かったり、対象の性別が重要ではなかったりすることを「バイセクシュアル bisexual」といいます。同性愛に関する問題は、同性愛者だけの問題ではなく、バイセクシュアルの人の問題とも重なります。また、性指向がどの対象にも向かわないことを「Aセクシャルasexual」といいます。一方、社会の多数の人、つまり、「男として女が好き」「女として男が好き」というような人は異性愛者(ヘテロセクシュアル heterosexual)と言います。
同性愛者の割合は、「同性愛者」の定義や調査方法の違いにより、確定したデータはありません。一例を挙げると、1948年にアメリカの医師キンゼイが発表した調査結果では、調査したアメリカの白人男性のうち、50%が少なくとも一度は同性に性的に魅かれたことがあると認め、4%がもっぱら同性と性的関係を持っていると報告しています。
同性愛者は「どうして同性が好きなのですか?」と聞かれることがあります。それに対しては「それが自然だから」と答えることもあれば、相手が異性愛者の場合、「あなたが異性を好きなように、私は同性が好きなんだ」と答える場合もあります。同性を好きになるか異性を好きになるかということは、多くの場合、本人の意思とは無関係です。なお、上で「性指向」という言葉の説明をしましたが、「シコウ」に「嗜好」や「志向」ではなく「指向」という漢字を当てるのには、そのような「自然に関心が向かう」という気持ちが込められています。