11.ゲイは女性が嫌い?
ゲイが同性を性愛の対象とするのは女性嫌いだからなのでしょうか。
そもそも「女性嫌い」とはどういうことでしょうか。もしも、女性(異性)とセックスできないことをもってそう呼ぶのだとすれば、たいていの異性愛の男性は「男嫌い」、異性愛の女性は「女嫌い」ということになります。よく、「男と女は友情を築けない」などと断言する人(特に男性に多い)を見かけますが、それは自らすべての人間関係をセックスに倭小化しているように思われます。
私たちの社会はおおむね「性的=私的=女性的」なものを、「非性的=公的=男性的」な場面から排除することで成り立っていると言えます。これを「ホモソーシャル(つまりは、男同士の連帯社会)」と呼びます。このホモソ一シャルは、男性上位的であり、同時に異性愛主義的であるという意味で、きわめて女性とゲイ男性に対して抑圧的なシステムであると言えます。ちなみに、ホモソーシャルがゲイ男性に対して抑圧的であるのは、ゲイが男性(公的な存在)でありながら、そこに性的なもの(私的関係)を持ち込むからだと考えられます。私たちは、このシステムの中にどっぷりと漬かって生きているため、異性愛の男性だけでなく、ゲイ男性であれ、女性であれ、「女性嫌い(ミソジニー)」から自由であることはできません。
同性愛の問題もまた、性指向による差別にのみ還元される問題ではなく、ジェンダーの問題とも深いかかわりがあると言えます。
【参考文献】
『女ぎらい ニッポンのミソジニー』上野千鶴子著紀伊國屋書店