10 在日コリアンの納税の義務と権利の保障は?
在日コリアンには納税の義務があるのでしょうか。また、納税をしているなら、日本人と同じように生活上のさまざまな権利が保障されていますか。
在日コリアンにも、他の外国籍住民、日本国籍をもつ住民と同様に納税の義務があります。日本で生活をしているかぎり、買い物に行けば消費税を払いますし、働くことによって所得税も納めています。
本来、義務を課せられているのですから日本国籍をもつ人と同じような権利があってよいように考えられます。しかし、現実には、さまざまな運動により多少は改善されたものの、参政権をはじめとして権利の制限が残されています。永住資格をもつ在日コリアンは、日本社会に深く根をおろして生活しています。在日コリアンの歴史(Q1参照)を考えれば、日本国籍をもつ住民と同等の権利を認めないことには疑問をもたざるを得ません。
社会保障制度について言えば、日本では長い間、生存権は日本国民のみに保障されるとして、在日外国人はさまざまな社会保障から排除されてきました。国民年金法ができた時には「日本国民であること」が年金に加入する条件(国籍条項)であったため、在日外国人は掛け金を払うことすらできませんでした。
1982年、難民条約の発効に伴って、日本国籍をもつ人も国民年金に加入できるようになりましたが、制度のはざまに残された高齢者や障がい者たちは現在も老齢年金や障害基礎年金の支給を受けることができず、苦しい生活を強いられています。さらに、介護保険制度の発足にあたっても、在日コリアン無年金者への配慮はありません。
結果として、経済的に困窮する在日外国人の高齢者や障害者は、生活保護を受給することが多くなります。しかし生活保護について、外国籍者の受給者は不服の申し立てをする権利を持ちません。生存権を保障する権利としての生活保護費対象となる日本国籍者とは対照的な処遇ということができるでしょう。
*執筆協力:NPO法人 多民族共生人権教育センター