Q2.部落問題は今、どのように現れているのですか?
結婚、就職、ネット上の差別的書き込み・・。今、ここにある問題です。
わかりやすいものは、差別落書、差別を意図する内容の葉書・封書・ビラ、そしてインターネット上の差別的な書き込みです。とくに電子掲示板では、部落の人びとへの差別をあおったり、部落の所在地を暴こうとする書き込みが続いています。
また、結婚や就職など人生の節目で、身元調査(Q15参照)などのために、部落出身者という【出自】が問題にされることがしばしばあります。夢がついえた結果、自殺においこまれるような悲惨なケースもあります。結婚差別の背景には戸籍(Q15参照)にもとづく【家制度】があります。結婚した場合でも、部落出身でない側の親族との行き来が絶たれることは少なくありません。
仕事の面では、就職差別のほかにも問題がのこされています。中高年世代は今よりも差別のきびしかった時代を生きてきました。そのため多くの人たちが、収入が不安定で肉体的にもきびしい条件で働いてきました。差別と貧困のために学校教育から排除されていたこともその要因のひとつです。このため各地の部落では、おもに女性たちが【識字】の取り組みを重ねています。
若い世代でも収入の少ない仕事をしている比率が高く、とくに近年は失業・不安定就労者の増加が注目されています。ここには部落がかかえている低学力・低学歴の問題も影を落としており、大学進学率の低さなど、学力・経済面での格差はのこされています。
地域での差別としては、部落の子どもたちと同じ学校に通わせないという越境通学や学区編成、町内会の分離、あるいは部落の不動産価格が周辺より低いことなどがあげられます。部落に対する【忌避意識】は依然としてあります。
このように、部落問題はわたしたちの社会のさまざまな場面に現れているのです。
【出自】
どういう家柄なのか、どのような血筋か、どんな地域で生まれ育ったか、ということを意味する語。「家柄」とは、「家」を単位としてなされる、伝統的な価値観にもとづいた社会的評価のことです。「血筋」は、本来は生物学的な事実をさすものですが、出自の判断基準として用いられる際には、その枠をこえて社会的な観念としてとらえられています。
【家制度】
「家」とは、旧民法においては、一家として戸籍に登録されている親族集団のことを指しました。現在の民法では廃止されていますが、その影響は、社会的な価値観のなかに色濃く残っています。この価値観で判断する場合、その人がどのような「家」や「血筋」に属しているのかが評価の基準となり、その人の個性や特性などによる評価はなおざりにされてしまいます。
【識字】
貧困や差別などのため教育を受ける機会を得ることができなかった人たち(おもに成人)が、社会参加に必要な力を得るため、基本的な読み書きを学ぶこと。
【忌避意識】
避けよう、遠ざかろう、関わらないでおこうとする意識。部落や部落の人を避けるという行動の背景には、この忌避意識があり、その根底には、偏見や差別的な感情があるといえるでしょう。