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パラリンピックとは

2019/04/10


4. 2020年東京大会に向けて

(1) 大会ビジョンと基本コンセプト

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は「スポーツには世界と未来を変える力がある」という大会ビジョンを掲げています。これは、招致の時からのさまざまな活動、また、作文などで寄せられた言葉から紡ぎ出され、生まれました。

大会ビジョンは、全ての人が自己ベストをめざし(全員が自己ベスト)、一人ひとりが互いを認め合い(多様性の理解と調和)、そして、未来につなげよう(未来への継承)の3つを基本コンセプトとしています。

・全員が自己ベスト

アスリートたちが自己ベストをめざすことです。さらにアスリートたちが自己ベストを記録できる環境を作ろう、そして、ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人びとを最高の「おもてなし」で歓迎しましょう、との思いが込められています。

・多様性の理解と調和

人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことです。世界中の人びとが多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会をめざしています。

・未来への継承

世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していくことです。

(2) パラリンピック・ムーブメント

1964年の東京大会は、「パラリンピック」という名称が初めて使われ、オリンピック会場の活用や車いす利用以外の障がい者の参加など、障がいのある人びとの社会活動参画を促し、活動支援体制整備の礎となりました。

2020年の東京大会は、「パラスポーツを通じて障がい者にとってインクルーシブな社会を創出する」という目標を掲げ、同一都市として初めて2回目のパラリンピックを開催します。前述の基本コンセプトを実現する上で、パラリンピック競技大会の成功は極めて重要な要素となります。

パラリンピック・ムーブメントは、パラリンピックスポーツを通して発信される価値やその意義を通して世の中の人に気づきを与え、より良い社会を作るための社会変革を起こそうとするあらゆる活動のことをさします。パラリンピック・ムーブメントは、Courage(勇気)、Determination(強い意志)、Inspiration(インスピレーション)、Equality(公平)の4つの価値を重視します。これらは、すべてのパラスポーツ関係者にとって基本的活動基準でもあります。

例えば、チケット販売においては障がいのある人も含めてアクセスしやすい購入機会を提供する仕組みを構築し、あらゆるチケット保有者が安心して来場、大会観戦を通じて最高の体験を楽しむことができるよう、大会運営のあらゆる面においてパラリンピックの観客のニーズを踏まえたサービスを提供し、観客とアスリートが一体となった熱気あふれる会場の実現をめざしています。アスリートが最高の舞台で自己ベストをめざすためにも、観客による大会の盛り上がりが不可欠だと考えています。

◆ 日本パラリンピックの父 中村 裕博士

中村 裕(なかむら ゆたか)博士は、障がい者の社会復帰に一生を捧げた伝説の医師です。1951年、九州大学医学専門部を卒業後、同大学の整形外科医局に入局した博士は、当時未開の分野であった医学的リハビリテーション研究の道を歩み始め、英国のストーク・マンデビル病院に留学し、ルードヴィッヒ・グッドマン博士の教えを請いました。そこで、グッドマン博士の"手術よりスポーツ"によるリハビリテーションが、多くの患者を社会に復帰させていることに強い衝撃を受け、以来、日本の立ち遅れを回復するため、障がい者スポーツの普及と仕事を通じての社会参加、自立に猛然と挑戦をし続けました。

1964年、閉じこもりがちだった障がい者の意識を変えるため、日本の障がい者スポーツの原点といえる東京パラリンピックの誘致に力を注ぎ日本選手団団長を務めるとともに、その後も障がい者スポーツの発展に尽くし、博士は日本パラリンピックの父と呼ばれています。

また、障がい者に対する単なる同情や保護だけでは障がいをもつ人の真の幸福は得られないとして、「チャリティより働く機会を」をモットーにして、1965年、社会福祉法人「太陽の家」を設立するとともに、障がい者に対しては社会に溶け込む意志力と実行力が備わるように障がい者を叱咤激励し続けました。

1984年、中村博士は57才の生涯を閉じますが、博士が提唱し開催に尽力した「大分国際車いすマラソン大会」は1981年の国際障害者年に世界初の車いす単独のマラソン大会としてスタートし、今では世界パラ陸上競技連盟の公認大会として、男女ともに世界記録を有し、国内外から最多の車いすアスリートが集い、しのぎを削る世界最高峰の大会へと成長しています。

<参考文献>
・「パラリンピックを学ぶ」(早稲田大学出版部)
・「JPC」ホームページ
・「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」ホームページ
・「太陽の仲間たちよ」〔解説:保護より機会を!〕(講談社)
・パラリンピックとある医師の挑戦(講談社)
・「社会福祉法人 太陽の家」ホームページ
・「大分国際車いすマラソン大会」ホームページ