ワークシート「ある男子大学生の手記」
2000/04/30
私は、差別意識や偏見を持っていると思います。そして、私に限らず人間誰しもが、偏見を持っているのではないかと思います。
以前、母が私に結婚問題の話をしてくれましたが、その内容を紹介します。 母は、結婚前の会社員時代に、同和地区出身の男性と交際をしていました。母は、その男性を本当に愛していました。しかし祖父、つまり母の父親は、二人の交際・結婚を認めませんでした。母は毎晩泣きながら悩み、一度はその人と駆け落ちすることまで考えました。そんな時、相手の男性から母に別れを告げてきました。その際男性は母にこういいました。「君のお父さんが二人の関係を認めて くれないのは仕方がないことだ。ぼくは、君と別れる。でも、覚えておいてほしい。ぼくにも君と同じ赤い血が流れていることを。」 そして今、母はこういいます。「自分はあの時、差別をする父親を憎んだ。でも、自分が今、実際に親になってみると、子どもが同和地区出身者と交際する、あるいは結婚するといってきたら、どう しても反対するだろう」と。 私は今、差別はよくないとの意見を持っています。でもそれは、無責任な立場での表面的な意見に過ぎないと思います。なぜなら、自分が父親となり、娘が同和地区出身の男性と結婚するといい張った時、それを受け入れて祝福できる自信がありません。きっと祖父のように、そして母のように、差別をしてしまうのではないだろうかと思うのです。そして、私が持っているこの偏見や差別意識を自分の子どもにも与え、子どもも偏見や差別意識を受け継ぐのではないだろうかと思うのです。 「ぼくにも赤い血がながれている」、この言葉は、永久にぼくの胸に焼きついているでしょう。また、私は母を尊敬していますが、私が偏見を持つようになったのは、母からの偏見を受け継いだから に他なりません。そのことを思うと複雑ですし、差別を是認するような考えではいけないとも思うのですが、自分の問題として考えた場合、どうしても自分が持つ差別意識や偏見を克服することができ ません。そして、自分としてこの問題を克服できないばかりか、将来自分の子どもにも偏見や差別意識を無意識のうちに伝えていってしまうのだろうと思うのです。 このワークシートはご自由にダウンロードして教材としてお使いください。
|