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ビデオ「新ちゃんがないた」

2000/04/28



1.テーマ:障害者問題
2.教 材  
(1)タイトル ビデオ「新ちゃんがないた(アニメーション)」(37分)
(2)制作 企画:北九州市、北九州市教育委員会、北九州市同和問題啓発推進協議会
制作:東映(株)
※問い合わせ先:
北九州市教育委員会(093-582-2352)
(3)概要 先天性疾患のため下肢に障害をもつ少年(新ちゃん)が、家庭や学園や小学校での生活の中で、母親、友人、先輩、先生など周囲の人々とのふれあいや葛藤を通じて成長していく。
泣き虫だった新ちゃんが、逞しくなったのはなぜか。運動会のリレー競技に出場する新ちゃんに対し、生徒会やクラスの仲間はどのような反応・対応をするのか。夏休みの宿題で書いた新ちゃんの読書感想文が入賞するが、障害者の立場から何を訴えたかったのか。読書感想文入賞のお祝いの会でのお母さんの挨拶を聞いて新ちゃんが みんなの前で初めてボロボロと涙をこぼしたのはなぜか。
アニメーションではあるが、視聴者に感動を与え、「障害者問題」「共生」などの課題を考えさせる佳作教材。
3.ねらい  
「障害者」「障害者問題」の正しい定義を理解する
「障害者との共生」について考える
「障害者」に対する日常の認識、言動をふりかえる契機とする
差別を解消するために必要な実践行動はどのような内容かを考える他
4.研修方法  
ビデオ視聴→解説・まとめ
ビデオ視聴→意見発表→解説・まとめ
ビデオ視聴→相互討議→解説・まとめ他
 
5.運営資料  
(1)導入説明
  「障害者」とは、単に障害の有無で区分するのではなく、「身体的または精神的機能の不全のために、通常の個人または社会的生活に必要なことを確保することが、自分自身では完全に、または部分的にできない人」とされています。そして、「障害者 問題」とは、「障害者がその障害ゆえに社会権や生活権など基本的な人権を保障されていない」という問題です。
社会(家庭、職場、地域社会)には、障害をもった人が少なくありませんが、障害は同情の対象ではなく、個性(違い)なのです。
仮に現時点で障害がない、あるいは自分の関係者に障害をもった人がいないといっても、いつ障害をもつことになるかもしれませんし、今後高齢化社会が進展することを考えると、障害をもった人が増加することが予想され、私たち一人ひとりもその当事者としての立場から障害者問題を考えることが必要です。
また、「障害=不幸」なのではなく、障害に対する理解不足(偏見)と健常者中心の発想によるハード・ソフト両面の社会システムが「不幸」を生んでいるのであり、社会の様々な障壁をなくしバリアフリーの社会をつくっていくことが必要です。 私たちは個人のレベルで障害に関する理解を深め、「自分には関係がない問題」「関わりを持ちたくない」「かわいそうだ」といった考えを克服し、障害者との共生を考えることが必要なのです。
(2)討議・解説のポイントとまとめ
  以下に列記した以外にも様々な意見や感想をより多く引き出し、各解説のポイントや、上記「ねらい」「導入説明」も参考に参加者の意見に添った研修のまとめを行います。
 
新ちゃんの母親は悩んだ末、障害児だけの学園へ入学させたが、学園での治療や訓練を経て息子が小学校5年生になる時に一般校へ編入させた
 
障害児の就学については、「障害児だけの学校や学級で学んだ方がよい」「一般校・一般学級で健常児と共に学び、学校生活をおくった方がいい」との二つの意見に大別されます。
障害児の就学の権利や、障害児やその保護者が何を望んでおり、地域社会としてどのように考え、対応していくことが必要なのか、また、健常児が障害児とのふれあいを経験することの意義などについて、受講者の体験も引き出しな がら意見交換を進めてみましょう。

転入してきた新ちゃんを全校集会で紹介する際、手助けなしに歩かせた
 
当然のことながら、障害児をさらし者にしてはいけません。
しかし、障害者を理解するには、ありのままの現実を直視し、「違い」を受け入れてこそ真の理解が生まれます。
「かわいそう」といった感情で、現実の直視を怠ってはいないでしょうか。

障害児が使用し易いようにトイレを改造する
 
障害者や立場の弱い人たちは、いいたいことをいう機会や勇気がなくて、その結果として更に状況・環境が悪くなり、困っていることが多々あります。
周囲の者が積極的にコミュニケーションを図り、共に考え、具体的な行動を起こすことが大切です。

(運動会)障害児は普通に走れないからリレー参加対象から外すべきだ
 
本人に確かめないで、障害児に対して「○○することはできない」「○○させるとかわいそうだ」などと決めつけ、結果として障害児の気持ちを傷つけること があります。また、建前の理由は立派そうにみえても、本音では障害児を見下していたり、勝負にこだわるなど自分の利益のみを優先するために健常者側の勝手な論理で勝手な取り決めをしていることがあります。
障害という「違い」を克服するための周囲の人の励ましやサポートが、障害者の真の支えであり、生き生きと明るく、そして強く逞しく生きていく支えとなります。また、子どもに限らず人間は、社会学習が不十分であるがゆえに、時として 残酷な行動をとる一面があることを理解しておくことも必要です。

「健全ではない肉体にも健全な精神が宿る!」
 
この教材の中心メッセージともいえる言葉です。また、一般的に「ことわざ」や「いいつたえ」などは正しく、真実をついていると考えられがちですが、はたしてそうでしょうか。思いこみや不用意な言動で、 他人を傷つけていることはないでしょうか。
「普通の友だちの一人としてよろしくお願いします」という言葉の意味(真意)は?
 
障害者にとって励ましの言葉は嬉しいものではありますが、必要以上に強調されたり、同情されることは、時には苦痛であったり、重荷になったりします。 障害者にとって、障害は不自由ですが不幸なことではありません。不自由を克服できない社会(ハード・ソフト両面)が不幸を生んでいるのです。「違い」を認め合い、「普通」のつき合いができる個人、社会を形成していくことが大切なの です。