「僕のリンパ管腫は、"今日は調子が悪いのかな"という程度の腫れです。それこそ見た感じは"たいしたことないじゃない"と言われるほどなんですが、男同士で 恋愛話をする場面になると"おまえは(顔が腫れているから)難しいんじゃないか"という雰囲気になります。そこでは"ふつうでない"と位置づけられてしまうんですね。 障害者でもないけど、健常者でもない。だから、ほんと揺れ動くんです」
どれほど「ふつうでない」のかを比べても意味はない。男女差や年齢差についても 同じだ。むしろ比べることによって心の揺れや傷は深まっていく。
個々の関係や常識をもとにコミュニケーションを
顔にアザやキズがある人たちの「生きづらさ」とその理由を、ほんの一部ではあるが挙げてきた。しかし実際にユニークフェイスの当事者と顔を合わせた場合、どうふるまえばいいのかと戸惑う人も多いだろう。ひとつのヒントとして、アザのある子どもを育てている、ひとりの母親の言葉を紹介したい。「息子と接する人には、侮辱をしない、じっと見つめない、だけど無視をしない、という好意ある無関心でいてほしい」。
また、松本さんはこう話す。
「どう接するかは、場所や状況、相手との関係性によっても変わってきますよね。通りすがりの人ならジロジロ見たり無遠慮な質問をしないというのがマナーだけど、クラスメートや職場の同僚なら違う配慮が必要かもしれない。当事者側も、聞かれたく ない人もいれば聞いてくれた方が楽だという人もいる。僕自身は"放っておいてくれ"というタイプなんですが(笑)」
個々の関係や常識と照らし合わせながら、コミュニケーションをしていくよりほかないようだ。「好意ある無関心」という言葉をかみしめつつ。「ユニークフェイス」は、'02年1月より特定非営利活動法人(NPO)として新しいスタートを切る。
「医療情報の提供やユニークフェイスの子どもを育てている親への支援・メンタルケア、学校でのいじめを止めたり、就職差別をなくすためのプログラム作成、ユニークフェイスが抱える問題を専門家と共同研究するなど、大規模な活動を展開していく予 定です」と石井さん。「障害者」と「健常者」のはざまで揺れるユニークフェイスの人たちが、声を上げ始めた。「人間、顔じゃないよ。大切なのは中身だよ」という言 葉が、今度は「ふつう」の顔をもつ人たちへのメッセージとして発信されるのだ。社会は、そして「ふつう」の顔をもつ人々は、このメッセージをどう受け取るのだろうか。
もっと「ユニークフェイス」を知りたい人に
見つめられる顔 ユニークフェイスの体験 |
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ユニークフェイスの会員16人が勇気をもって綴った体験談集。 石井政之・藤井輝明・松本学/編著 高文研/発行 本体価格1,500円 |
知っていますか? ユニークフェイス一問一答 |
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ユニークフェイスの定例会などで頻繁に出される質問について、当事者である会員たちが自身の経験を踏まえた回答を寄せた。 松本学・石井政之・藤井輝明/編著 解放出版社/発行 本体価格1,000円 |
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