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シリーズ「ジェンダーフリー・パーソン」第1回-保育士

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 保育の世界に、男性“保母”が誕生したのは1977年。以来22年が経過した今年、職名も「保育士」と変わり、各地で活躍する男性保育士が増えてきています。男女半々の子どもがいるのだから、保育士も半数が男性というのが理想かもしれませんが、その数は全国で1499人(97年度調査)。保育士総数の0.6%と、まだまだ少ないのが現実です。大阪府豊中市の保育士、畑中祐二さんにご登場いただきます。

男女の差より個人の差だから
「男だから」「女だから」と言うのを
そろそろやめませんか?

男も保育士になれるんだ目標を持って専門学校へ

 保育士になろうと思ったのは、高3の夏に新聞で男の保育士の記事を読んだのがきっかけです。子どもと触れ合える仕事もいいなあと漠然と考えていて、皆と同じように大学に進んでいいのかと迷っていた時期。そうか、男も“保母”になれるのか、と思いました。

 男性も受け入れている専門学校が見つかり、その学校に進みました。僕が入学した1985年は、1学年60人中、10人が男。学校では男女差を意識することはあまりなかったけど、たまに男同士で、就職できるだろうか、待遇面が厳しいのではと不安を話したりもしましたね。

 就職を前に、そんな不安は現実のものになった。あちこちの市役所に電話して「男も応募できますか」と聞いたところ、「え? ちょっと待ってください」と窓口の人が知らなかったり、知っていても「はい。男性もいいところまでいくのですがねえ」という返事が返ってきたり。採用には至らないと暗にほのめかされたこともありました。しかしながら、なんとか豊中市の保母試験に合格。1987年に採用され、障害者施設の指導員をした後、1992年から保育所勤務になりました。

重かった休憩室の扉もやがて軽くなった

 最初のうちは、新人として仕事へのとまどいに加えて、同僚が皆女性で年齢もさまざまという環境にも気後れしました。皆の視線が集まるのを感じて緊張したし、先輩同士が休憩時間に給食の内容について話しておられても、当時自分であまり料理をしていなかった僕はチンプンカンプン。話の輪に入っていけない。休憩室の扉が重かったですね(笑)。

 でも、先輩や同僚らに、素朴な質問をぶつけたりしてホンネで話していくうちに、子どもたちを真ん中に置いた保育をしていきたいという思いは、女でも男でも何ら変わらない・・・と、当たり前といえば当たり前のことを確認できて、休憩室の扉も次第に軽くなってきました。

 保育していて面白いなと感じるのは、2歳のときに「女の色だから」とピンクのスリッパを履かなかった男の子も、3歳になるとこだわらずに履くようになる。「好きな色の折り紙を選んで」に、3歳の男の子は青色を、女の子は赤色を選んでいても、4~5歳になると本当に好きな色を選ぶようになる。生まれたときから男の子だから、女の子だからと刷り込まれて来た子どもたちも、保育所でいろんな大人がいて、いろんな子どもがいることを知るうちに、男女の差より個人差なんだ、一人ひとりが皆違うんだと分かってくるのからでしょうか。「うちの子は、女の子なのに人形遊びをしない」と訴えるお母さんに、「お母さんは人形遊びをさせたいの?」と聞くと「いや別に」。で、「それなら、いいじゃないですか」「そうねえ」と話したこともありました。

 職員会議で僕が発言すると、たまに先輩に「それは男としての意見なの?」と言われることもある。でも、そんなとき、僕はちょっと待ってよ、と思う。男としてでなく、畑中祐二個人としての意見ですよね。

 男の保育士が誕生して、20年余りになるそうですが、まだまだ少数だからこういう取材もある(笑)。そろそろ、男だから女だからと言うのをやめにしませんか、と言いたいですね。


畑中祐二(はたなかゆうじ)
保育士。1966年大阪市生まれ。'87年、大阪府豊中市に初の男性“保母”として採用され、現 在は市立高川保育所に勤務している。


厚生省1997年度「社会福祉施設等調査報告」より

(C) ニューメディア人権機構 info@jinken.ne.jp


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