いい援助があれば作り直せる「生きるかたち」
ご主人を10年介護されたという83歳の女性から、嬉しいお手紙をいただきました。
ご主人を看送った後、耳もほとんど聴こえなくなり、自分の人生ももうこれきりかなと落ち込まれてて、京都新聞の私の連載(高齢者商品情報「グッズ」毎週連載中)で、電話の声を大きくする道具をお知りになったんです。取り寄せみたらすごくよく聴こえるようになって、こんな道具があったんだと気づかれたというのです。ご主人は身体が悪くなってから急にポータブルトイレなどいろんな道具を取り入れたけれど、不慣れなせいか使おうとしなかったので、私は元気なうちからいろんな物があることを知って上手に使いこなして、これまでの10年をもう一度取り戻したいという内容でした。
福祉用具とはそんなもの。元気なうちからちょっとした道具に慣れていたら、新しい道具にも関心をもってもらえて、すごく意義があると思います。
私は、介護って何かをしてあげるんじゃなく、何かをさせてもらうのでもなく、その人に何らかのかたちで不自由が出てきた時に、同じ視点に立って手を貸すだけのことだから、それを過剰に考えないことだと思うんです。自分らしく生きるかたちが壊れかけたり、見えなくなった時に、それをもう1回作り直すこと、その人の生きるかたちを築いていくことなんですね。そんな時に、道具がいるのか、人がいるのか、いろんな援助が必要になってくる。私たちは相談を受ければ、「道具ならこんな物があるんですが、お使いになりますか」とおずおずとご紹介したり、お貸ししたりしているわけです。
次回に続く
(2002年12月17日高齢者生活研究所でインタビュー)
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浜田きよ子(はまだ・きよこ)
1950年京都生まれ。同志社大学文学部卒業後、塾を開きながら父の帯問屋を手伝う。母の介護をきっかけに、高齢者が使いやすい道具について学ぶ。1995年から高齢者生活研究所を開き、福祉用具や介護などの生活相談を無料で行っている。これまで(財)テクノエイド協会「福祉用具と共に歩む生活」DVD作成委員長、(社)日本福祉用具供給協会「福祉用具でこんなに便利に」漫画冊子作成委員長などを委員会活動多数。現在、京都府新しい行政推進懇話会委員、堺市高齢者生きがいづくり活動実施支援事業審査会委員長ほか。京都新聞「グッズ」、西日本新聞「おたっしゃ雑貨店」、季刊『エブリ』連載中。著書に『高齢者の暮らしを支える道具と工夫Q&A』(ミネルヴァ書房)『高齢者が使いやすい日用品』(晶文社出版)など多数。 |
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本の紹介
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高齢者の暮らしを支える
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高齢生活研究所 浜田きよ子著
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